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【キャリア図鑑】Vol.3 40歳前後の転職
抱え込んだたくさんの「やらねば」を手放し、自分を解放した先にあるものとは
「キャリアオーナーシップ」発揮のヒントを、自分らしい「はたらく」を
かなえた人たちの事例も交えながら探る
皆さんは、「キャリアオーナーシップ」と聞いて何を想像しますか?「キャリア志向な人」「意識が高い人」、または「成長し続けること」「キャリアアップしていくこと」…… そんなことを思い浮かべるのではないでしょうか。「キャリアオーナーシップを育む社会の創造」を目指すパーソルキャリアは、自分の可能性を信じ、自分の意思でキャリア、そして人生を選択することが、「キャリアオーナーシップ」だと考えています。本連載では、当社のサービスを通じ、自らが望む「はたらく」をかなえた人たちの事例も交えながら、「キャリアオーナーシップ」発揮のヒントを探ります。
今回は、doda桜井貴史編集長が、関西エリアで転職をサポートしている、dodaキャリアアドバイザー飯島陽介に話を聞きました。
考えてしまうのは「WILL(やりたい)」より「MUST(やらねば)」 他者との対話を通じて、自信と自己効力感を取り戻す
doda編集長 桜井(以下、桜井):今回は、関西エリアのdodaキャリアアドバイザー飯島さんと、アラフォーと呼ばれる40歳前後で転職した方々が、どのように「キャリアオーナーシップ」を発揮し、自分らしい「はたらく」をかなえたのかを転職事例も交えながら探っていきたいと思います。
かつていわれた「35歳転職限界説」も今は昔。連載第3回のテーマは、アラフォーと呼ばれる「40歳前後の転職」としたのですが、私自身も37歳で転職を経験しています。まずは、16年以上キャリアアドバイザーとして活躍している飯島さんから見た、40歳前後の方の「はたらく」価値観やトレンド、他世代との考え方の違いなどについてお伺いできればと思います。
dodaキャリアアドバイザー 飯島(以下、飯島):キャリアアドバイザーに従事して16年ほどたちますが、40歳前後の方が直面する課題に大きな変化はないように思います。ただその中でも、この世代はいわゆる就職氷河期世代であり、特に生きるための手段として「はたらく」を選択してきた人も多いと感じます。また35歳以下と比較すると、「WILL(やりたい)」より「MUST(やらねば)」のウエイトが増える世代というのが特徴です。価値観はさまざまで傾向をつかむのが急に難しくなる世代ですが、結婚や出産、子どもの教育、親の介護など、この世代を取り巻く環境に起因するものが多くなってきます。故に年収や勤務地、リモートではたらけるのかなど「はたらく上での条件」を重視する傾向はあります。この世代になると採用選考時にポテンシャルを見てもらえる割合も減るため、強い意思を持って何を実現したいのかを明確にする必要がありますね。
桜井:「WILL」と「MUST」、興味深いワードが出てきましたね! この世代の実態として、「WILL」より「MUST」の割合を高くせざるを得ないという感じなのでしょうか?
飯島:初回のキャリアカウンセリング時点では「WILL」は少なく「MUST」を持つ人が圧倒的に多いですね。可能性軸で質問を重ねる中で「WILL」が増えていく、そして「WILL」を実現するために「MUST」を緩和して少しずつ変化していくイメージです。人と話すことでさまざまなことから解放されているのではないかなと思います。
桜井:「MUST」から「WILL」を重視する過程の話、面白いですね! カウンセリング時に、飯島さんが転職を希望される方とどのようなコミュニケーションをされているのか聞かせてもらえますか?
将来子どもに見せたいのはどんな姿か。新たな学びを得て一歩踏み出したい
飯島:ではここからは3つの事例を通してお話ししますね。1つ目は、スキルアップを目指しての転職事例です。将来的な子どもの教育を見据えて年収アップをかなえたいが、現職では今後も業務内容は変わらず給与アップは見込めない。一方でまた、これまでのキャリアに一貫性がないなどの理由で、転職活動はうまくいっていない状況でした。
桜井:なるほど。飯島さんはそうした状況の中で、どのようなコミュニケーションを取っていったのでしょうか?
飯島:大きく2つあり、1つ目は「問い」を立てて、転職で一番かなえたいことは何かを引き出すことです。これまで携わった職種を目指した経緯や、将来子どもに見せたい姿を軸に整理していきました。2つ目は、その人との対話を通じて好きや強みを引き出した上で私が言語化する、といったことを繰り返すことで、自信や自己効力感を持ってもらうことです。その結果出てきたのが、「現職では得られない新たな学びを得て、できることを増やすことで年収アップを実現したい」という深層の転職理由でした。
桜井:将来子どもに見せたい姿という問いは興味深く、なるほどと思いました。問いを立ててキャリアオーナーシップを引き出す、つまりキャリアオーナーシップの発揮にもつながりますよね! そして自己効力感を持つことはほかの年代にも必要な要素だと思うのですが、40歳前後の人の自己効力感はほかの年代とは違ったりするのでしょうか?
飯島:そうですね。自己効力感は自己理解の1つですが、これには第三者の視点が必要です。20代は年代的にも上司をはじめとする他者からの指摘やアドバイスを得る機会も多く、気づきにつながりやすいですよね。
桜井:確かに20代はそういったきっかけや会社の制度面での支援も多いですね。そして、30代後半になるとこれらが一気に減るわけですが、これまでの経験から一定の自負もありますし、いまさら聞かなくても…という思いもありますよね。
飯島:はい。30代後半になると、他者の声や指摘をシャットアウトしてしまう傾向も強まります。結果、気づきの機会が減り、負のサイクルに入りやすい。カウンセリングを受けたこの年代の方は、転職する、現職を継続する、いずれにしても転職に対する自信がついたという人が多いんです。皆さんどこかで自分にもまだ可能性があると信じていますし、潜在的にその可能性が引き出される機会を欲しているのだと思います。
求めていたのは条件にあったはたらき方ではなく、評価されて認められること
飯島:2つ目は、エンジニア歴が長い女性で子育て中の方です。現職での評価に透明性がなく将来的なキャリアアップのイメージが描けないというご相談でした。一方で、転職先に求める条件も多かったため、良い企業があれば転職も検討したいという感じでした。この方に対しても問いを立てて整理していく中で、「現職だと承認欲求が満たされない」というのが、ご自身の言葉として出てきたんです。そして、今後子育てが落ち着いたときに、今の環境で納得感を持って活躍できるイメージが持てないという自己理解につながっていきました。仕事と家庭、トレードオフではなく両方充実させたいという意思を見いだすことができた、すごくすてきな一歩だと思えた事例ですね。
桜井:こちらも他者からの問いやアドバイスがきっかけになって、これまで無意識のうちに自分でふたをしていた深層の思いに気づけたことが、次への大きな一歩につながったのですね。
「あこがれ」の解像度を上げたことによって見えた、本当のありたい姿
飯島:3つ目は、これまで複数社で専門職に従事していた男性です。家庭の事情で年収を上げたい、また大手企業への転職を希望されていました。タイプとしてはフォロワーシップ型の方で、この方にも問いを立てることから行いました。その中で「大手企業への転職で年収アップをかなえるなど、あこがれに向かって進む人生」と「得意を活かす人生」、どちらを大切にしたいかを問うたとき、ご本人から出てきたのは「得意を活かして評価される環境の中で新たな一歩を踏み出すことが大事」という言葉でした。これは、他者との対話を通じて、「あこがれ」の解像度が上がったことでの気づきだったと思います。夢をあきらめるのではなく、「CAN(できる)」を積み上げた先にある「WILL(あこがれ)」にいつかたどり着けばよいというイメージが持てた結果、年収アップも実現した転職成功につながりました。
桜井:30代後半だと、過去のあこがれから「別の人生もあったかも…」と思ってしまう気持ちもよく分かります。一方で、これからは自分の経験を活かすべきかなど、はざまの世代だったりしますよね。あごがれや漠然とした思いの解像度を上げるためにも、対話の機会は本当に大切ですね。
doda編集長の「これがキャリアオーナーシップの種」
桜井:ここまで3つの事例を紹介していただきましたが、改めて40歳前後以上で転職に挑戦する人がキャリアオーナーシップを発揮しながら今後のキャリアを考え、自分が望む「はたらく」を実現するためのポイントは何だと思いますか?
飯島:問いを立てて内省することで、自信や自己効力感を持つことですね。これには他者との対話が欠かせません。あとは、ぜひ人生は長いという認識を持っていただきたいですね。65歳まではたらくのであれば、社会人人生はあと30年近くあります。そのためには「CAN」を積み上げて「WILL」を達成するという発想や、リスキリングも大切になってくると思います。
桜井:今回の対談の中で、特に35歳から40歳は、会社でもプライベートでも、さまざまや役割を期待され、求められる年代であることを改めて認識しました。それ故、意識的に「WILL」を見直す時間を持たないと、「MUST」で頭がいっぱいになってしまい、実は「CAN」が積み重なっていること、それらが自身の経験や強みになっていることに気づけなかったりする。今回のこの対談を通じて、「WILL」「CAN」「MUST」のバランスを取り戻すことの大切さを改めて認識しました。
飯島:最後にお伝えしたいのは、「キャリアオーナーシップは、みんなで、ともに育むもの」だということ。私はキャリアアドバイザーとして、キャリアオーナーシップをベースに持ちながら伴走しています。カウンセリングを受けた方が、キャリアオーナーシップの発想に共感してくださり、自分の周りの方に伝めてくださるのが、私が考える理想の形です。これからもキャリアオーナーシップの輪をどんどん広げていきたいですね。
① 第三者と対話の機会を持つ。問いを立てて内省する。
30代後半になると、アドバイスや指摘を受ける機会も減り、それらの声をシャットアウトする傾向も強まりますが、自信や自己効力感を高めるためには、第三者の視点が必要です。「問い」を立て、他者との対話を通じて内省を深めることで、自身の強みや可能性、ありたい姿を再認識することが、一歩を踏み出すきっかけになるでしょう。
② 「WILL」「CAN」「MUST」をバランスよく持つ意識を。
30代後半というライフステージを取り巻く環境から、「WILL(やりたい)」より「MUST(やらねば)」が増えてしまう世代。「CAN(できる)」を積み上げることで「WILL」につながることもあるし、実現したい「WILL」が見つかることで「MUST」が緩和されていくこともあるでしょう。他者との対話は、さまざまなことから解放され、自分の新たな可能性に気づく機会になるはずです。
編集:パーソルキャリア広報部