PROJECT

企業から起業。
当たり前の枠を超える。

MyRefer スピンアウトストーリー

2018年8月にパーソルグループから独立したHRテックサービス「MyRefer」。企業が募集をかけて選考を行うこれまでの採用ルートではなく、社員の繋がりを通じて優秀な人材をリクルーティングする“リファラル採用”に特化しているのが本サービスの特徴だ。「実は、入社前から起業も視野にいれていました。」元パーソルキャリア社員の鈴木氏(株式会社MyRefer 代表取締役CEO)はそう語る。彼がなぜ、パーソルキャリアに入社したのか。そして、「MyRefer」というサービスを日本の採用活動の概念を覆す存在として、業界から注目を集めるまでに成長させることができたのか。そのストーリーを紐解いていく。

鈴木 貴史

株式会社MyRefer
代表取締役CEO

社員全員が、
エージェントになる時代。

—「リファラル採用」に着目したきっかけを教えてください。
当時のマーケットの動きを見ると、“法人”から“個人”へとプレーヤーが変わりつつありました。例えば、これまで大企業が行っていたようなシステム開発が、フリーランスのエンジニアに発注されるなど、テクノロジーの進歩によりさまざまな業界でクラウド化が進み、“個人が主役になる時代”がくるはずだと思っていました。
—それが採用活動にも関係してくると?
そうですね。これまでのように、企業が募集をかけて転職希望者から応募があって、その間に人材エージェントが入って、という既存の採用ルートは変わるはずだと思いました。採用を担う主体も、徐々に“法人”から“個人”にシフトすると感じていました。まさに、社員全員が人材エージェントになる時代がくるんじゃないかと。それが、「MyRefer」のベースになっている考え方です。
—構想当初の段階で、起業は考えなかったのですか?
リファラル採用を実現するためには、企業の人事の考え方を根本から変えていく必要があります。そうであれば、起業をしてスタートアップ環境に身を置きながら小さくサービスを世に出すよりも、パーソルキャリアが持っている数十万人の顧客データを活用しながらサービスをドライブさせていった方が成長速度も早いですし、数あるサービスの内の一つではなくて、次の時代のインフラになれるようなものをつくれるんじゃないかと感じて、社内の新規事業公募制度の「0 to 1」に応募しました。

日本から、
ドリームブレーカーを
なくしていく。

—「0 to 1」に応募してから、サービスの実現までのお話を聞かせてください。
3名のチームで応募しました。当時の最年少メンバーです。私が考えていた世界を実現させるために、毎日、夜もテレビ電話で会議をして構想を練っていきました。下剋上を起こすぞ、なんて言いながらね(笑)。当時所属していた営業統括部のメンバーにアンケート用紙を渡してお客さんに配布してもらったり、「doda転職フェア」で300人以上の転職希望者から話を聞いたり。社内外・領域問わず、100名以上の経営者や人事、事業企画の方に“壁打ち”相手になってもらったり、できることは片っ端からやりながらサービスを創り上げていきました。
—「MyRefer」を通じて、どんな世界を実現したかったのですか?
日本人の転職平均回数は1〜2回と言われています。一方で、米国などの海外を見てみると10回以上転職しているケースもざらにあります。転職回数が多ければいいというわけではありませんが、日本には一つの企業にしがみついてしまっている人がいるのもまた事実です。そういう人が、転職や起業を考えている人の“ドリームブレーカー”になってしまうような国にしたくないんです。雇用の流動性が高まれば、国全体の生産性も上がり、GDPも上がっていくはず。「MyRefer」を通じて、HR市場を活性化させ、日本全体の経済をよくしていきたいという想いがありました。

社会に、
自分が生きた証を残せるか。

—「MyRefer」の現在の状況を教えて下さい。
実は、2018年8月にパーソルグループから独立しました。理由はいくつかありますが、僕個人として“事業家”ではなく“起業家”として、自分の看板を背負って世の中に爪痕を残したかったという点が大きいです。更にサービスを大きく拡大させ、スピード感をもった意思決定をするため、スタートアップエコシステムの中でイノベーションのジレンマなく事業を前進させるため独立することを考えはじめました。
—周囲からの反対はなかったのでしょうか?
もちろん、独立を検討しはじめてから多くの時間を使って議論を重ねました。あくまでも、別の会社になったからといって関係がなくなるわけではありません。パーソルキャリアの社長、パーソルホールディングスの経営陣も含めて話し合った結果、お互いに相乗効果を保ちながらビジネスを進めていけると判断したので、最終的に独立という結論にたどり着きました。いい関係じゃなかったら、今このインタビューに答えていませんよ(笑)。
—最後に、新規事業に関わる魅力を教えてください。
まずは、スキルの面でいえば、事業計画からマーケティング、営業から契約まわりの法務など、あらゆる知識が新規事業には必要になってきます。これは、普通の仕事ではなかなか身につかないことだと思います。自分自身も、入社してから事業の立ち上げに必要なことを沢山学び、体感しました。先ほどお話した「0 to 1」という制度に関しても、大いに活用した方がいいと思います。事業アイデアを実現させるために年間計画をたて、プロジェクトの進行状況に応じて周囲のプロフェッショナルからアドバイスをもらうことができる。そんな状況は、スタートアップじゃあり得ません。そこでノウハウを吸収できたことも、自分にとって大きな資産になっています。あとは、スキル以外の面での新規事業の魅力といえば、自分の生きた証を世の中に残せる可能性があるということじゃないでしょうか。
—生きた証とは、どういうことでしょうか?
ビジネスという領域は、人が求めるものを創ることができれば、すぐに形に現れ、確実に世の中に残ります。世の中に価値として認められるまでタイムラグがあり、必ずしも『今いいコンテンツ』がリアルタイムにヒットするとは限らない領域もあると思います。シンプルに誰もがいいと思うコンテンツがヒットする、かつ、長きに渡り世の中に価値を残し続けられるのがビジネスであり、それこそが自分が生きた証だと考えています。せっかく生きるのであれば、存在意義といいますか、世に何かを残したいじゃないですか。僕の場合でいえば、例えば将来自分の子どもがリファラル採用で会社に入ったら、そんなに嬉しいことはありません。自分の手で、新しい世界をつくっていけるということは、新規事業の大きな魅力なんじゃないかと思います。