パーソルグループのスローガン「はたらいて、笑おう。」をテーマに、パーソルキャリアに中途入社し、現在活躍している社員を紹介します。今回は、伊藤 鑑(あきら)です。国を挙げて取り組みが進められている「地方創生」。各自治体や企業が力を入れはじめている中、伊藤はまったく土壌がない状況で、地方創生チームの立ち上げを任されました。道なきところに道をつくることが自分のミッション、と実感することになった立ち上げ背景とは。

人材ビジネスに関わりたいと思ったのは、自身の苦労した実体験から

―伊藤はパーソルキャリアの地方創生支援チームでマネジャーを務めています。内閣府の「プロフェッショナル人材事業」の取り組みに賛同し、人材不足に困っている地方企業の採用支援を行っています。これは社内では前例がなく、まさに獣道を分け入るような取り組みでした。
伊藤が人材ビジネスに関わるようになったのは、それまでの自身の多様な経験が基になっています。2000年に大学を卒業後、2年間は司法浪人として過ごし、先輩に誘われてリクルート系の会社に契約社員として入社。求人広告の文字校正などを担当している中で、たまたま見つけたのが前職の医療機器の会社でした。

まったく関連性がないように見える選択ですが、実は司法浪人をしていたのも医療訴訟に興味を持っていたからなので、自分の中ではつながっていたんです。
何より、定職についていない焦りもあったので、自分のキャリアのブランクを埋めるためにも、専門性の高いドクターと対峙して、早く経験を積みたいと思ったんですよね。

―そうして約4年間、医療機器の営業を経験し、順調に社会人経験を積んでいきました。大きな不満もない生活でしたが、たまたまヘッドハンターに声をかけられたことで、転職を視野に入れることになり、2006年に再び人生の転機を迎えます。当時興味を持っていた企業へ応募するために登録したのが転職サービス「doda」(※)でした。「とりあえず」の感覚で受けたキャリアカウンセリングで、初めて人材業界を知ることとなります。
※当時のサービス名は「インテリジェンスの転職支援」

人材業界にはこれまでに感じなかった可能性が広がっていると思ったんです。私自身も司法浪人をしていて新卒入社の機会を逃したので、転職する際に選択肢が限られ、かなり辛い思いをしました。
経験が限られていても、転職希望者のキャリアのご支援ができることに価値を感じて、インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社を決めました。

―入社後は前職の経験を活かし、人材紹介事業の中で医療業界の法人営業を約7年間担当。一方、医療業界の採用に関わる中でさまざまな課題が見えてきました。業界に対してもっと新しいことを働きかけたいという議論を行なったり、医療業界で働く方々を対象としたキャリアセミナーを独自に開催したりするなど、医療業界の採用をより推進するためのさまざまな取り組みに意欲的にチャレンジしてきました。

振り返ると、今までにない道をつくるという機会をもらえたことはとてもラッキーでしたね。大手企業よりも中小企業のお客さまの方が採用支援の難易度が高い分、自分なりに工夫して介在価値を発揮できることがやりがいと感じていました。

―伊藤の「道のないところに道をつくる」という想いはこの時期に強く形成されていきました。その後、キャリアアドバイザーを3年間経験した頃、最も大きな転機が訪れます。

きれいごとでは進まない、地方創生推進の壁

―当時の上司から、新しい取り組みへのチャレンジを提案されたのは2015年。ちょうど社外に向けて何か新しいことをしていきたい、と思っていたところでした。
事業内容は、内閣府の「プロフェッショナル人材事業」という取り組みに参画し、各地域の人材ニーズをヒアリングし、その要件に合った人材をご紹介し、その地域の人材活性につなげていくというものです。

まさしく何もないところに道をつくっていく仕事なので『ぜひ!』と引き受けました。弊社もそうですが、多くの企業のメイン事業は『きれいに舗装された大通り』のようなところを高速で行き来することだと思います。ただ僕は、その道から少し外れたところにある場所をつなぐ「獣道をつくること」が好きだとあらためて思ったんです。自分自身の成長実感だけではなく、「あなたが担当してくれたから」を肌で体験できるからです。

―とは言え、立ち上げ当初、メンバーは伊藤1名のみ。もちろん、仕組みも方法も誰も知りません。文字どおり何もないところから、何ができるのかを調べるところからのスタートでした。

最初の3カ月間はひたすらネットサーフィン(=調査)でした(笑)。

―各地域の外郭団体に対して、「プロフェッショナル人材事業」に参画したいという意思表示をするところから開始。しかし、自治体によって手続き方法はさまざまで、特に必要書類が届くわけでもありません。すべての自治体に対して、何がいつまでに必要かを調べ上げ、一つひとつ手続きを踏んでいくという極めて地道な作業が続きました。
1年目は重要拠点の事業者登録を逃してしまうという失敗もありましたが、各地域とのパイプをつなぐことはできました。
次の壁は、各地域で得た人材ニーズを社内の法人営業にどう連携していくかという点でした。求人票を作成し、「doda」の登録者にその求人を届ける仕組みをつくらなくてはいけなかったのです。

最初は全部自分でやろうと思っていましたが、それではマンパワーに限界がくると考え、社内の法人営業に求人を渡して求人票をつくってもらうようにしました。
ただ、超売り手市場の市況感の中、彼らの多くは都市部既存顧客へのご支援で既に多忙を極めており、「地方求人の意義や価値はわかるが、果たしてご支援できるのか」という考えも根強く、なかなか優先的に取り組んでもらえない状況がしばらく続きました。

―伊藤の言う「舗装された大通り」を必死で走っている法人営業に、あえて獣道を歩くことをお願いするようなものでした。そこで伊藤は彼らが走りやすいように道を整えることに注力し、自発的に地方創生に関する社内メルマガの配信もはじめました。

地方創生の実態や、地方求人にどんなメリットがあるのかなど、とにかく情報発信に徹しました。そうすると少しずつ賛同してくれる人たちが増えてきたんです。
もともと世の中や社会課題解決に興味を持っている人たちなので、社会貢献性が高いことに対してポジティブに受け止めてもらえましたね。そこがうちの会社の好きなところのひとつだなとあらためて感じました。

―こうして伊藤の獣道が少しずつ形になり、徐々にその獣道を通る人たちが増えていったのです。

地道な活動の末に生まれたのは、個人と個人の信頼関係

各自治体の外郭団体、社内の法人営業をはじめ、さまざまな役割の人たちとの連携が進み、徐々に地方企業の採用支援ができるようになりました。
地域企業は採用に関する情報やノウハウが少なく、「doda」のような人材紹介事業を知らない採用担当者も多数います。そのため、どうすれば人を採用できるのかを、データを交えながら共に課題解決に取り組むことで、徐々に信頼関係は強固なものになっていきました。
このようにある程度仕組みができた中でも、伊藤はさらなる獣道をつくっています。

企業や他の人材会社を集めて、効率よく情報交換をできる場を初めてつくったことは喜んでいただけました。また、最近ではパーソルキャリアの知名度が上がってきています。経済産業省の講堂で「プロフェッショナル人材事業」の拠点マネジャー約150名が集まる会合に、パーソルキャリアとして呼ばれ、地方の人材採用に関しての話をする機会をいただいたんです。
全国のプロフェッショナル人材のことを一番理解していることをご評価いただいたので、これは嬉しかったですね。

―パーソルキャリアだけではなく「伊藤 鑑」という個人の名前でも最近ではお話をいただくようになっています。

親近感を持ってくれているのか、地元の名士を紹介してくれることもあります。単に仲良くなるということだけではなく、一緒に地域をよくしていこうと思ってくれているんです。人材ニーズのある企業に対してもこちらが進めやすいようなパスを渡してくれて本当に助けられています。
しかも営業として勉強になることもものすごく多くて。敏腕営業の方に信頼いただけているのは営業冥利に尽きますね。

―こういった事例が増えてきたことで、「まだきれいな舗装道路ではないものの、分け入って獣道をつくった」という自負を感じることができています。
「地域の企業は採用が難しい」という固定概念があった社内の意識も、各フロント組織の頑張りを通じた具体的なご支援事例の増加とともに、大きく変わってきています。そういった意味でも伊藤がつくった獣道には大きな意味があるのでしょう。

獣道の先にあるのは、やはり獣道

―内閣府が行なう「プロフェッショナル人材事業」は2020年までの5年間限定の施策ですが、地域活性の必要性はますます高まっています。

これからは地域の中小企業と密接な関係性を持っている関係外郭団体の皆さまや金融業界の企業との連携を強めて、ライフワークとして地域活性に関わっていきたいと思っています。
今回の取り組みは関係者の皆さんがつくったスキームがありましたが、これからは未知の領域で、何もないところから考えなければいけません。でも楽しみですね。

―地域の関係者と密に関係を築くことで、地域の人材採用における課題や特性を自分のことのように語れるようになりました。同時に、社内に対しても新たな連携手法を確立してきたことで、伊藤は顧客・社内双方に道をつくる経験を積むことができました。
これまでグループ各社・各部署がそれぞれの方法で取り組んできたことをひとつにまとめていくこと、そこからより顧客に価値提供していくこと、そのプロセスを引き受けることに伊藤は自信を持っています。
まだ誰も手を付けていない分野に、先頭を切って取り組むことに使命感を感じている伊藤。獣道が舗装道路になり、多くの人が行き来できるようになったら、再び新しい獣道をつくりに行く。人材ビジネスに関わることで見えた自分自身のミッションを、伊藤はこれからもまい進していきます。

※この記事は2018年7月の内容に加筆・修正を加えたものです。