ナレッジ・ノウハウ集
2025.12.08
転職理由の伝え方|面接官に好印象を与える方法
転職理由はなぜ重要?
面接で転職理由を聞く目的
まず、転職希望者の価値観・仕事観を理解するためという点があげられます。転職を決意するに至った背景には、その人の仕事に対する価値観や、キャリアに求めるものが反映されています。たとえば、「より大きな裁量を持って仕事をしたい」という理由であれば、自律的で責任感の強い人材であることが推測できます。一方、「チームでの協働を重視したい」という理由なら、協調性を大切にする人物像が浮かび上がります。面接官は、こうした価値観が自社の企業文化や求める人材像とマッチするかを見極めているのです。
次に、入社後の定着・活躍を見極める判断材料として活用するためです。企業にとって、採用は大きな投資です。せっかく採用した人材がすぐに辞めてしまっては、採用コストも教育コストも無駄になってしまいます。そのため、転職理由から「同じような不満で再び転職してしまわないか」「自社で長期的に活躍してくれそうか」を判断しようとしているのです。
転職理由でチェックされる3つの要素
面接官は転職理由を聞く際、一般的に以下の3つの要素をチェックしています。これらの要素を意識して準備することで、説得力のある転職理由を用意することができます。
まずは、「一貫性」があるか、職歴・志望動機との整合性があるかです。これまでの経歴、転職理由、そして志望動機が一本の線でつながっているかが問われます。たとえば、これまで営業職として顧客との関係構築を大切にしてきた人が、「もっと深く顧客の課題解決に携わりたい」という理由でコンサルティング職を志望するなら、そこには明確な一貫性があると言えるでしょう。
次に、「論理性」つまり、理由と行動に筋が通っているかという点も重視されます。転職を決意した理由と、実際に取った行動に論理的な整合性があるかが見られています。たとえば、「スキルアップしたい」という理由なら、現職でスキルアップの機会を模索したのか、自己研鑽の努力をしたのか、といった点が問われます。また、なぜその課題が現職では解決できず、転職によって解決できると考えたのか、といった根拠も重要です。
そして、「再現性」つまり、不満で再び辞めないかどうかは、企業にとって気になる点です。転職理由であげた課題や不満が、自社でも起こりうるものではないか、面接官は慎重に見極めています。たとえば、「残業が嫌だ」という理由で転職を希望している人に対して、自社も繁忙期には残業が発生する可能性があるなら、入社しても不満に感じるのではないかと考えます。
好印象を与える転職理由の伝え方
ネガティブからポジティブへ言い換える
転職を考える際、現職への不満や課題が起点となることは自然なことです。しかし、それをそのまま伝えてしまうと、「不満があるとすぐに辞める人」という印象を与えかねません。重要なのは、不満や環境要因を直接的に言わないことです。
たとえば、「上司とうまくいかなかった」という本音があったとしても、それをそのまま伝えるのではなく、「より多様な価値観を持つメンバーと協働し、新たな視点を取り入れながら成長したい」といった前向きな表現に変換します。これは嘘をつくということではなく、同じ事実を異なる角度から捉え直すということです。
他にも、「昇進の機会がなかった」は「より大きな責任と裁量を持って、組織に貢献したい」に、「やりたい仕事ができなかった」は「自身の強みをより活かせる領域で専門性を高めたい」に言い換えることができます。このような言い換えによって、同じ事実でも印象は大きく変わります。
事実と感情を切り分けて話す
転職理由を語る際、感情的になってしまうことは避けるべきです。感情的・主観的な表現を避け、客観的事実を中心に話すことで、理性的に物事を考えているというアピールもできます。
たとえば、「ひどい会社だった」「最悪の上司だった」といった感情的な表現は、たとえそれが事実であったとしても、聞き手に良い印象を与えません。代わりに、「〇〇の経験から△△を感じた」といった伝え方を意識しましょう。
具体的には、「月の残業時間が平均80時間を超える状況が1年以上続き、ワークライフバランスの改善が必要だと判断しました」といった客観的な事実を基にした説明や、「年功序列の評価制度の中で、若手の提案が採用されにくい環境でした。そのため、より実力主義的な環境で挑戦したいと考えるようになりました」といった、事実に基づいた所感を伝えるとよいです。
前職で得た学びを踏まえて語る
転職理由を語る際、前職を否定するだけで終わってはいけません。辞めた理由だけでなく「何を学び、次にどう活かすか」を明らかにすることで、成長意欲の高い人材であることをアピールできます。
どんな職場環境であっても、そこから学べることは必ずあります。その学びを次のキャリアにどう活かすかを語ることで、ポジティブな印象を与えることができます。たとえば、「チームマネジメントを経験し、より裁量のある環境で挑戦したい」という表現は、前職での経験を肯定的に捉えた上で、さらなる成長を目指す姿勢を示しています。
他にも、「ルーティン業務が中心でしたが、その中で業務効率化の重要性を学びました。この経験を活かし、より創造的な業務にも携わりたいと考えています」や、「大企業での組織的な仕事の進め方を学びました。この経験を基に、よりスピード感のある環境で意思決定に関わりたいです」といった表現も効果的です。
志望動機と一貫性を持たせる
「なぜ前職を辞めたか」と「なぜこの会社を選ぶか」をセットで説明することが重要です。転職理由であげた課題や希望が、応募先企業でどのように解決・実現できるのかを明確に示す必要があります。
たとえば、「より専門性を高めたい」という転職理由であれば、応募先企業の「専門性を重視する文化」「教育制度の充実」「スペシャリストのキャリアパス」などと結び付けて説明します。「グローバルに活躍したい」という理由なら、企業の海外展開の状況や、国際的なプロジェクトの機会などと関連付けます。
面接する企業の方向性を調べて、自身のビジョンとマッチしているかを見定めることが重要です。
パーソルキャリアであれば、「はたらいて、笑おう。」というグループビジョンや、人々に「はたらく」を自分のものにする力を というミッションがあります。自身のキャリアビジョンがどのようにマッチするかを説明することで、一貫性のあるストーリーを作ることができます。

シーン別・転職理由の伝え方例
転職理由は人それぞれ異なりますが、よくあるパターンごとに効果的な伝え方があります。ここでは、代表的なシーンごとに、具体的な例文と伝え方のポイントを詳しく解説します。
キャリアアップを目指す場合
キャリアアップを転職理由とする場合、「より高い専門性を身につけたい」「新しい領域で挑戦したい」といった成長意欲を前面に出すことが効果的です。ただし、単に「成長したい」では抽象的すぎるため、具体的にどのような成長を目指すのかを明確にする必要があります。
成長意欲や目的意識を強調する際のポイントとして、現職での成果や学びをしっかりと示した上で、さらなる高みを目指す姿勢を見せることが重要です。たとえば、以下のような伝え方が効果的です。
「現職では営業として3年間、新規開拓を中心に経験を積み、昨年は部門内でトップの成績を収めることができました。しかし、現在の環境では扱える商材や顧客層が限定的で、より幅広い提案スキルを身につけることが難しいと感じています。貴社では多様な業界のクライアントに対して、複雑なソリューション提案ができると伺っています。これまでの営業経験を活かしながら、コンサルティング要素の強い提案営業にチャレンジし、顧客の経営課題解決に貢献できる人材へと成長したいと考えています。」
このような伝え方により、現職での成果を認めつつも、さらなる成長への意欲があることを示すことができます。また、応募先企業でなければ実現できない具体的な理由も含まれているため、説得力が増します。
職場環境・人間関係が理由の場合
職場環境や人間関係の問題は、多くの人が転職を考える理由の一つですが、そのまま伝えると「人間関係の構築が苦手なのか?」という印象を与えかねません。「よりチームで成果を出せる環境ではたらきたい」など、前向き表現に変換することが重要です。
たとえば、以下のような表現が適切です。
「現職では個人の成果を重視する文化が強く、それぞれが独立して業務を進めることが多い環境です。私自身、個人として成果を出すことはできましたが、チームで協力して大きな目標を達成する経験を積みたいと考えるようになりました。貴社の『チーム一丸となって顧客価値を創造する』という理念に共感し、メンバー同士が切磋琢磨しながら成長できる環境で、組織全体の成果に貢献したいと考えています。特に、部門を超えたプロジェクトチームでの活動が活発だと伺い、多様な専門性を持つメンバーとの協働を通じて、自身の視野を広げたいと思っています。」
このように、ネガティブな要素を直接言及せず、ポジティブな希望として表現することで、建設的な転職理由として伝えることができます。
仕事内容・ミスマッチが理由の場合
入社後に仕事内容のミスマッチを感じることは珍しくありません。しかし、「思っていたのと違った」という理由では、リサーチ不足や判断の甘さを露呈してしまいます。「自分の得意分野をより活かせる業務に携わりたい」などポジティブな方向性へ転換し、前向きな理由として伝えましょう。
「入社時は企画職として採用されましたが、実際の業務は既存施策の運用が中心で、新規施策を企画する機会が限られていました。運用業務を通じて、施策の実行力や細部への注意力を身につけることができましたが、同時に自分の強みは新しいアイデアを形にすることだと再認識しました。これまでの経験で培った実行力を活かしながら、貴社のような新規事業開発に積極的な環境で、企画から実行まで一貫して携われる仕事にチャレンジしたいと考えています。特に、貴社の『失敗を恐れず挑戦する』という文化に魅力を感じており、試行錯誤しながら新たな価値を生み出すことに貢献したいです。」
このように、ミスマッチを単なる失敗として終わらせず、そこから得た学びと自己理解を次のキャリアにつなげる姿勢を示すことが重要です。
家庭・ライフステージの変化による場合
結婚、出産、介護など、ライフステージの変化に伴う転職も一般的になってきました。しかし、プライベートを優先しすぎる印象を与えると、仕事への意欲を疑われる可能性があります。「家庭を優先したい」よりも「長くはたらける基盤を整えたい」と表現することで、企業にとってもメリットがある転職であることを伝えられます。
たとえば、以下のような伝え方が効果的です。
「昨年結婚し、将来的な家族計画も考える中で、長期的なキャリアビジョンを見直すようになりました。現職では全国転勤が必須で、深夜までの残業も常態化しているため、ライフステージの変化に対応しながら継続的にキャリアを積むことが難しいと判断しました。貴社では、リモートワークやフレックスタイム制度が整備されており、多様なはたらき方を選択できると伺いました。ワークライフバランスを保ちながら、これまで培った経験を活かして長期的に貢献できる環境だと感じています。効率的なはたらき方を実現することで、限られた時間の中でも高い成果を出し、組織に価値を提供したいと考えています。」
会社の経営・方針変化による場合
M&Aや経営方針の大幅な転換など、会社の変化を理由とする転職も少なくありません。この場合、会社への批判と受け取られないよう注意が必要です。「方針変更を機に、自分の価値を発揮できる環境を考えるようになった」という表現で、前向きな転職であることを伝えましょう。
批判ではなく、自身の方向性の違いにフォーカスすることが重要です。会社の決定を尊重しつつ、自分のキャリアビジョンとの相違点を冷静に説明します。
「昨年、当社が大手企業グループの傘下に入り、経営方針が大きく変わりました。これまでのベンチャー的な風土から、より慎重で組織的な意思決定プロセスへと移行しています。この変化は企業の安定成長には必要なことだと理解していますが、私自身はスピード感を持って新しいことに挑戦することにやりがいを感じるタイプだと改めて認識しました。貴社のような成長フェーズにある企業で、変化を恐れず新しい取り組みにチャレンジできる環境で、自分の強みを最大限発揮したいと考えています。」
さまざまな転職理由をインタビュー
パーソルキャリアに転職した人にインタビューした記事を紹介します。
岡本旬平さんは、MaaS業界からHR業界に転職しました。「プロダクトの力で世の中の『負』を解消したい」という一貫したキャリアの軸を持ち、特に「人が生み出す価値が適切に評価される社会をつくりたい」という思いからパーソルキャリアを選択しています。HR業界は未経験でしたが、MaaSで一定の成果を出した後、今度は個人のキャリアにアプローチする形で社会貢献したいという明確な目的を持って転職を成功させています。
▶キャリア採用インタビューはこちら
渡邊優真さんは、信用金庫から転職しました。前職で友人の無形商材コンサルティング営業のスキルの高さを目の当たりにし、「自分の営業力はどの程度なのか」という不安を感じたことがきっかけです。「ロジカルに戦略を立て、顧客の課題解決に貢献する営業力を身につけたい」という明確な目標を持ち、無形商材の法人営業としてパーソルキャリアのリクルーティングコンサルタントを選択しています。
▶キャリア採用インタビューはこちら
矢山侑樹さんは、不動産会社、外車カーディーラーを経て、社会人3年目でパーソルキャリアに入社しました。「もう転職で失敗したくない」という強い想いから慎重に転職活動を進め、「自分のように仕事選びで後悔し、不幸になる人を増やしたくない」という明確な目的意識を持ってHR業界への転職を決意しています。過去の失敗経験を前向きな動機に転換し、今では「やりたいことを見つけてキラキラしている」と語っています。
▶キャリア採用インタビューはこちら

転職理由でNGな伝え方
どれだけ正当な転職理由があっても、伝え方を間違えると面接官にマイナスの印象を与えてしまいます。ここでは、避けるべきNGな伝え方とその改善方法を解説します。
他責的・感情的な表現
転職理由を語る際、最も避けるべきは他責的で感情的な表現です。「上司が悪かった」「評価が不当だった」などは印象を悪化させる典型的な例です。たとえそれが事実であっても、他者や環境のせいにする姿勢は、「問題に直面したときに他責にする人」という印象を与えてしまいます。
たとえば、「上司が無能で、まともな指示も出せなかった」という表現は、聞き手に非常に悪い印象を与えます。同じ状況でも、「上司とのコミュニケーションスタイルの違いから、自分の提案や意見を効果的に伝えることが難しかった。より双方向のコミュニケーションが活発な環境で、自分のアイデアを形にしたい」と表現すれば、建設的な印象になります。
不満よりも「改善意識」や「挑戦意欲」を示すことが重要です。問題に直面したとき、それをどう乗り越えようとしたか、どんな努力をしたかを語ることで、前向きな人材であることをアピールできます。
抽象的すぎる・本音が伝わらない
抽象的で曖昧な転職理由は、面接官に「本当の理由を隠しているのではないか」という疑念を抱かせます。「キャリアアップのため」だけでは説得力が弱いのです。この表現では、具体的に何を目指しているのか、なぜ現職ではそれが実現できないのかが伝わりません。
具体的な経験や目標とセットで説明することで、転職理由に説得力を持たせることができます。たとえば、単に「スキルアップしたい」ではなく、「現職では扱える技術スタックが限定的で、モダンな開発環境での経験を積むことが難しい。貴社では最新技術を積極的に導入しており、特にクラウドネイティブな開発やマイクロサービスアーキテクチャの実装経験を積むことで、エンジニアとしての市場価値を高めたい」と具体的に説明することで、明確な目的意識が伝わります。
「やりがいを求めて」という抽象的な理由も、具体化が必要です。「現職では定型業務が中心で、創造的な仕事の機会が限られています。貴社のような新規事業開発に力を入れている企業で、ゼロからサービスを企画・立ち上げる経験を積み、事業創造のプロフェッショナルとして成長したい」といった形で、具体的なやりがいの内容を示すことが重要です。
志望動機と矛盾する内容
転職理由と志望動機に矛盾があると、信頼性が大きく損なわれます。
面接前に自分の軸を整理しておくことが不可欠です。自分が本当に求めているものは何か、優先順位はどうなっているのかを明確にし、それに基づいて一貫性のあるストーリーを構築する必要があります。
たとえば、転職理由で「ワークライフバランスを重視したい」と述べながら、激務で知られる企業に応募すると矛盾が生じます。この場合、「効率的なはたらき方を実現しつつ、集中的に高い成果を出したい」といった形で、両立可能な説明をする必要があります。

転職理由は「前向きさ」と「一貫性」で伝える
転職理由の伝え方は、転職活動の成否を左右する重要な要素です。転職理由を考える際の最も重要なポイントは、「前向きさ」と「一貫性」です。どんなにネガティブな理由があったとしても、それを前向きな動機に転換し、過去・現在・未来が一本の線でつながるストーリーとして語ることが求められます。
まず、転職理由の本質を理解することから始めましょう。面接官は単に退職理由を知りたいのではなく、あなたの価値観、キャリアビジョン、そして自社での活躍可能性を見極めようとしています。そのため、転職理由は自己PRの一環として捉え、戦略的に構築する必要があります。
次に、ネガティブな要素をポジティブに転換する技術を身につけることが重要です。「できなかった」を「したい」に、「不満」を「希望」に変換することで、建設的な印象を与えることができます。ただし、これは嘘をつくということではなく、同じ事実を異なる視点から捉え直すということです。
転職は人生の大きな転機です。しっかりと準備を整え、自信を持って転職理由を語れるようになれば、きっと理想のキャリアへの扉が開かれるはずです。前向きな姿勢と一貫性のあるストーリーで、面接官の心を掴み、転職を成功させましょう。
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監修者:HATARACTION!編集部
"はたらく課題"と"ビジネス"をつなげてとらえ、自分ゴトとして、その解決プロセスを楽しむパーソルキャリアの社員をご紹介します。
