
プロジェクトストーリー
2022.12.27
人材サービス企業だけが握る採用データの「民主化」を実現したHR forecaster。グロース期に入り求人要件の最適化に欠かせない業界標準ツールを目指す
HR forecasterは、求人要件が採用マーケットと照らし合わせたとき、どの程度の乖離があるか「総合評価」「人材の平均年収」「候補者数」「競合する求人数」の6項目で評価する無料サービス。dodaが蓄積した100万件を越える転職データをもとに、最適な採用ターゲットの設定、人材要件を明確化することによって、採用成功率の向上、採用期間の短縮を図ることができる。2021年11月の正式版リリースから約1年で1500社を超える企業、そしてパーソルキャリアの営業部門に所属する2000名超のメンバーに利用されている。また全国24万人のHRパーソンが選ぶ『HRアワード2022(プロフェッショナル部門人材採用・雇用部門)』において、優秀賞を受賞するなど、採用のプロからの評価も高くグロースが期待されているサービスだ。
- ※このプロジェクトは「MISSION VALUE Award2022」でシルバー賞を受賞しました。
Profile
プロダクト&マーケティング事業本部 クライアントプロダクト本部 プロダクト横断統括部 HR_Forecaster部
2018年、パーソルキャリアに新卒入社。人材紹介部門の法人営業として、インターネット広告会社やゲーム会社、SIer、大手IT企業、コンサルティングファームを担当。2021年4月、キャリアチャレンジ制度を活用し、新規サービスの立ち上げを主務とするサービス企画部に異動。以来、HR forecasterの企画担当者を務めている。
プロダクト&マーケティング事業本部 カスタマープロダクト本部 デザイン統括部 デザイン2部 リードデザイナー
新卒でWEB系の技術者派遣会社に正社員として入社。リフォーム会社紹介サービスの運営会社でコーダー兼デザイナーとして経験を積み、インターネット広告代理店ではバナーデザインを担当。その後、2019年にパーソルキャリアに入社。現在はHR forecasterを担当するデザインチームの一員として、同サービスのUI/UXデザインの改善に携わる。
プロダクト&マーケティング事業本部 クライアントプロダクト本部 テクノロジー統括部 プロダクト横断開発部 兼 テクノロジー本部 クライアントサービス開発部 マネジャー
大手新聞社の情報システム部、半導体装置メーカーのエンジニアとしてシステム開発を経て、2021年にパーソルキャリアにエンジニアとして入社。現在はフロントエンジニアとして、HR forecasterの開発を担当。新機能の実装や機能改善、ソースコードの改修、開発環境の整備に携わっている。
HR forecasterはデータドリブンな採用を実現するサービス
- 本プロジェクトの立ち上げた経緯を教えてください。
- 斎
- これまでの中途採用は、求人マーケットや転職希望者の動向を熟知する人材サービス会社が、求人企業に対してヒアリングするなどして採用ターゲット像や採用基準をすり合わせ、取りまとめた募集要項に則り、人材紹介サービスや求人メディアなどを通じて母集団を形成し応募につなげることが一般的でした。それこそがパーソルキャリアのような採用のプロが介在する価値であり、人材サービス会社の存在意義であるのは確かであるものの、求人マーケットや転職希望者の動向を知るわれわれが介在しなければ、適切な求人要件をまとめられないという状態は企業にとってあまり健全な状態とは言えません。われわれのお客様である企業ご自身が、採用すべき人材像の解像度を上げた状態で採用活動に臨めるようになれば、すり合わせや合意形成にかけていた時間を短縮し、データドリブンな採用が実現できるようになるのではないか。その課題を解決するために立ち上がったのが「HR forecaster」です。2020年1月ごろから企画が動き出し、2021年2月にα版を社内の営業部門と一部のお客様に公開、8月にβ版、11月に正式版をリリースしました。
- HR forecasterの特徴を教えてください。
- 斎
- HR forecasterは、dodaが長年にわたり蓄積した100万件を超える採用データをもとに、作成された求人ターゲットの妥当性を「総合評価」「人材の平均年収」「候補者数」「競合する求人数」などの6つの指標から評価できるサービスです。たとえば、ほしい人材の属性が少なかったり、争奪戦が激しかったりすれば、ターゲット像を見直すべきでしょうし、想定していた年収と相場に乖離があれば、年収を上げるか、もしくは採用条件を緩和すべきか、といった判断をごく早い段階で行えます。経験則や勘によらず、データによって最適な人材要件をまとめられる。しかも利用料金は無料。それがHR forecasterの特徴です。
- 主なユーザーは?
- 斎
- 企業規模で申し上げると、10名から5000名以上の企業で業種を問わず幅広いお客様にご利用いただいています。ユーザー数は2022年5月時点で1000社を突破。一般企業のお客様以外にも、パーソルキャリアに所属する法人営業担当者などを含めて2000名以上の社員も利用しています。
求人企業、転職希望者、パーソルキャリアにとって価値あるサービスを作る喜び
- それぞれの役割について聞かせてください。
- 斎
- 私はα版がリリースされた直後、2021年4月からサービスのディレクション担当としてこのプロジェクトに参加しています。ここにいるデザイナーの田中さんが所属するデザインチーム、西澤さんがいるエンジニアチームと話し合いながら、お客様から集めた声などをもとに新機能を企画し、実装と運用に必要なプロセスをマネジメントする立場です。
- 田中
- 私は2020年1月からはじまったサービスデザインの検討段階からこのプロジェクトに参加しています。デザインの方向性が固まってからは、機能追加に伴うUI/UXの検討とデザイン、サービスのグロースに向けて既存機能やレイアウトなどの改善を行っています。
- 西澤
- 私は2021年4月にパーソルキャリアにフロントエンジニアとして入社し、2021年10月〜2022年9月頃までHR forecasterの開発全体をリードしておりました。そして、現在は関連機能の開発のリードを担っています。
- このプロジェクトにアサインされたときの印象はいかがでしたか?
- 斎
- 社内のキャリアチャレンジ制度を利用してこのプロジェクトに参加する前まで人材紹介事業の法人営業を担当しており、社内ユーザーのひとりとしてα版のHR forecasterを使っていました。そのため、サービス自体に馴染みがありましたし、企業様と接する中で「採用活動にデータを活用すべき」と常々思っていたので、まさにやりたいことが実現できると感じました。
- 田中
- 私はUI/UXデザインに挑戦したくてパーソルキャリアに入社したので、HR forecasterの立ち上げプロジェクトにアサインされたときは「ようやくやりたかったことができる」と嬉しい気持ちになりました。斎さんたちサービス企画部からの要望を踏まえ、どうしたら無機質になりがちなデータをわかりやすく見せられるかを考えるのは面白そうでしたし、挑戦しがいがある取り組みだと思ったのを覚えています。
- 西澤
- 私も新規サービスの立ち上げに携わりたくてパーソルキャリアに入ったので、おふたりの気持ちはよくわかります。HR forecasterは、データに基づく採用活動を広げる意味で、求人企業や転職希望者にとってはもちろん、われわれ採用を支援する側にとっても意義深いサービスです。入社間もない段階からこうした社会的な使命を負った新規サービスに携わることができ、日々やりがいを感じながら楽しく開発をしています。
異なるユーザーの要求に応える難しさは、仕事のやりがいに直結する
- どんな場面で難しさを感じますか?
- 斎
- すでに1000社を超えるお客様に利用していただいてはいるものの、まだまだデータを活用した採用活動に敷居の高さを感じているお客様は少なくありませんし、より多くの企業様にご利用を頂きたいと思っております。その上で、HR forecasterをご利用頂いたことで、「効率的で精度の高い採用ができた」というお客様をどれだけ増やせるかについては常に心を砕いています。
- 田中
- 一般の企業ユーザーと社内ユーザーとではデータの活用方法やニーズが微妙に異なるため、あえてサイトをふたつに分け、デザインも変え出し分けているのですが、それぞれの志向を汲みデザインに落とし込むのは容易ではありません。ただ、斎さんを筆頭にサービス企画部の皆さんは、定期的にユーザーヒアリングを実施し、その結果に分析を加えた上で的確なディレクションをしてくださいます。知恵を絞って期待に応えられたときの達成感は、ほかのサービスではなかなか味わえないことかもしれませんね。
- 西澤
- いま田中さんが言った通り、HR forecasterには社外向けと社内向けでふたつのサイトがあります。それぞれを高い水準で維持しながら機能を改善したり、増やしたりするのはエンジニアとしても決して楽ではありません。しかしユーザーの違いを踏まえ、サイトをふたつに分け最適化に努めたからこそ、ユーザー数が伸びたのも確かだと思っています。正式版のリリースから約1年経ち、これからグロースフェーズに入るにあたって効率的な開発体制を整えることも大事な取り組みだと思っています。
- 3人で協力し、困難を乗り越えたエピソードがあれば、ぜひ聞かせてください。
- 西澤
- 2022年9月に公開した条件選択機能UI変更でしょうね。HR forecasterの中でも一番大きな改修でしたし、事前準備や仕事の割り振り、プロジェクトの回し方を含め、腹を割ったコミュニケーションが必要な取り組みでした。
- 田中
- 私もそう思います。この改修では検索画面に「経験スキル」「業種」「資格」でも検索できるよう条件を追加することなども検討されており、大きな仕様検討から軽微に見えるデザインの変更まで幅広い視点での改修をおこないました。「ユーザーにとってよりよい改修とは何か」を、その範囲の大小にかかわらずに、チーム全体で十分に検討できたのはよかったですね。斎さんのご協力で、デザイン段階では実際の使用者に参加いただくユーザーテストができたのも印象的でした。
- 斎
- ユーザビリティテストを複数人に対して実施した上で、田中さんにはいくつもデザイン案を起こしていただき、西澤さんにはユーザビリティを損なうことなく実装可能か、また技術面で将来的に禍根を残さないか検討していただきました。ふたりの負担は決して少なくなかったと思います。
- 西澤
- とはいえ提案していただいた案では、技術的、コスト的に難しい場合、代替案を示せばそれを受け入れてくれる柔軟性も感じましたし、ディスカッションの過程で相互理解も深まりました。この取り組み以降、仕事もしやすくなったので、とてもいい経験をしたと思っています。
- 斎
- そう言ってもらえると嬉しいです。話し合いと検討を重ねた結果、検索項目の追加は取りやめ、既存のUI/UXを洗練させる方向に決定をしたのですが、それができたのは、おふたりを筆頭にエンジニア・デザイナーチームと良いシナジーが埋めたからだと感じています。結果として、社外ユーザー、社内ユーザーの双方から「以前より使いやすくなった」と評価していただき、メンバー同士の関係も深まりました。チームとして、この試行錯誤には大きな意味があったと感じています。
- 田中
- サービスとして求めるものとユーザビリティの兼ね合いは一筋縄ではいきません。このときの経験で改めて、企画、エンジニア、デザイナーの協力なくしていいサービスは作れないことがよくわかりました。この件を通じ、UI/UXデザイナーとして一段成長できた気がします。
ユーザーアンケートの評価も上々。究極の目標に向け、サービスのスケールを目指す
- プロジェクトの成果についてはいかがでしょう?
- 斎
- α版のリリース以降、随時ユーザーアンケートを実施しているのですが「今後も活用したい」とお答えいただいたお客様は約90%に達し、HR forecasterを活用し、お客様の手で作成された累計求人数はすでに1000件を突破し、社内ユーザーに至っては1万件を超えています。求人内容の見直しによる年収の向上や条件の緩和によって、採用実績が向上したと言う声や「直感的で使いやすい」「詳細なデータが見られるので採用ターゲットの絞り込みがしやすくなった」「データが共通言語となり人事と現場の間で意思疎通が図りやすくなった」といった感想が耳に届いています。
- このプロジェクトを踏まえ、今後どのような取り組みにチャレンジしますか。
- 斎
- まずはHR forecasterの認知を上げ、少しでも多くの皆さんにデータを活用した採用の素晴らしさを体感してもらうことが当面の目標です。今後は現状のスナップショットに加え、過去の変遷を振り返ったり、将来の予測をしたりできるデータ分析機能の強化や、人事と現場をつなぐコミュニケーション機能なども、ニーズがあれば採り入れていきたいと思っています。どのような進化をするにしても、HR forecasterが目指すべきは中途採用の機会の最大化なのは変わりません。さらに言えば、HR forecasterを採用活動に携わるすべての人にとってなくてはならないサービスにする。それが究極の目標です。
- 田中
- デザイナーとしては、スピード優先で優先順位が下がり気味だったデザインシステムの整理に取り組みつつ、視認性が高く操作性にも優れたユーザー体験を実現するのが目標です。HR forecasterを活用することによって、採用に関する議論が活性化するような、UI/UXデザインを追求していきたいと思っています。
- 西澤
- サービスをスケールさせるには新機能の実装もさることながら、適切なタイミングで技術的負債を返済することも重要なポイントです。ソースコードの見直しや共通化、テストの自動化にも積極的に取り組み、HR forecasterを急激なユーザー数増加にも耐えうるサービスにすることがエンジニアの使命だと思っています。斎さんや田中さんたちとも協力して、HR forecasterを技術面から支えていければと思っています。
- ※社員の所属組織および取材内容は取材時点のものになります。
- ※社員の所属事業部名称は、2025年4月時点での名称となります。
監修者:HATARACTION!編集部
"はたらく課題"と"ビジネス"をつなげてとらえ、自分ゴトとして、その解決プロセスを楽しむパーソルキャリアの社員をご紹介します。