自ら仕事を選んで主体的にはたらく。自分で決めたことだから、という納得感を抱いてはたらく人を増やしたい。
顧問 原野 司郎
日本のはたらく人々が希望や誇りを抱きにくくなっている
日本のはたらく人々のエンゲージメントが低い状況が続いています。「仕事への熱意が高い社員」の割合は、世界最低レベルです。なぜ日本人は「つまらない」と感じているのでしょうか。
私は、日本ではたらく人々が「はたらく」ことに十分な意味や価値を見いだせず、仕事が生きる「手段」になっているからだと考えています。自己実現のしにくい労働環境も影響しているでしょう。はたらく人々が、また、これから社会に出る若い人たちが、そんな中で希望を持ってはたらけるでしょうか。
バブル崩壊以降、日本経済の停滞は30年に及びます。リーマンショックや東日本大震災が、人の心に停滞感をより深く刻みました。はたらく上で最も大切な希望や誇りが抱きにくくなっています。では、どうしたらいいか? 私もずっと考えてきました。
納得感のある仕事を自分で選べる環境を広げたい
私は、一人ひとりが自身の仕事に納得感を抱けることが大切だと感じています。仕事の種類やレベル感、報酬の多寡とは関係ありません。パーソルグループのビジョン「はたらいて、笑おう。」という感覚は、納得感のある人こそが持てるものです。そういう人はエンゲージメントも高い。私たちパーソルキャリアのミッション「人々に『はたらく』を自分のものにする力を」に、私は、「納得感のある仕事を自分で選べる社会に」という想いを重ねています。
私は長年、学生や就活生の支援にかかわってきました。入社後も目を輝かせながらはたらける人には共通点があります。「何のためにはたらくのか」「どんな仕事をしているか」を自分の言葉で語れているのです。たとえ与えられた仕事であっても、そのなかで主体的に考え、納得できるものを見つけていく。「自分ゴト」化する。ここが大切だと思います。パーソルキャリアでは、社員が主体性を発揮できるように、最近の人事制度改革をはじめ、さまざまな取り組みをしています。
わかりにくい自分の価値。それは他人との関係の中から見つかる
自分の価値って、自分ではよくわからないものですよね。何がしたいかが自分でもわからない。自己分析をしても答えが出ないこともある。なぜそうなるか。自分だけで答えを見つけようとするからです。たとえば人と一緒に何か行動を起こして、手応えがあったとします。その行動が自分の価値発見のきっかけになる。特に「他人との関係」から、自分の価値が見つかります。人と関われば、自分で自分を見るのと同時に、他人から自分を見てもらうことができる。他人と共に動けば、一人では考えられないモノ・コトも生まれる。自らの役割も価値も、そして「はたらく」ことへの納得感も生まれます。
だから私は、主体的に行動を起こすことの大切さを伝えてきました。まず、動く。まず、はたらいてみる。手を動かす。人を巻き込む。学生にも、社員にも、言っています。指示された仕事を正確に実行するのも大事ですが、自分で決めて自分で動くことはもっと大事。言われたことは受け身になりがちですが、自分で決めたことなら、他人事でなく「自分ゴト」としてやれる。責任感も生まれる。主体性を発揮できれば、受け身の時には気づけない自分の価値も見えてきます。
大事なのは学びによって自分を刷新すること。変化を恐れないで
逆に主体的でなく、納得せずにはたらいている人は、失敗をした時に他人や環境のせいにしがちです。昔、旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)では、「他責厳禁」という言葉をよく聞きました。自分以外のものごとに責任を押しつける他責の姿勢では、仕事が「自分ゴト」になるはずがない。納得感も抱けません。
とはいっても仕事や環境が変化すると「そう簡単に納得感は生まれないよ」という人もいるでしょう。私自身も、そうでした。その時に私がしたのが、新しい状況への「学び」と過去の「学び」を捨てること。知識やスキルを吸収する(ラーニング)とともに、過去に学んで身に着いたことをほぐし、捨てていく(アンラーニング)。新しい自分に変わるには、ただ学習するだけなく、変化のために、手持ちの知識にこだわらないことも大切なのです。自分が培ったものに執着せず、変化を恐れないこと。何かを捨てなければ人は変われません。
はたらく場には、変化を促す環境や学びの環境が必要だと私は考えています。今の私があるのも、「学び」と「学びを捨てる」意識のおかげです。パーソルキャリアという会社は、良いと思えば躊躇なく自身をアップデートする会社です。環境と自身をアップデートしながら、主体的に動き、学び、納得感をもって仕事と向き合っていく。私は、そんな場を社内にも社外にも広げていきたいと思います。
- ※掲載している内容・肩書・社員の所属は取材当時のものです。