「全ての人が報われる社会にしたい」強い入社動機が、“雇用によらないはたらき方”を支える「HiPro」を生み出した。

執行役員 鏑木 陽二朗

両親の姿を見て生まれた決意

私が2001年、パーソルキャリア(旧インテリジェンス)に入社したのには、強い動機があります。私の両親は、社員数15人ほどを抱える中小企業を営んでいました。幼少時代は不自由なく過ごしていましたが、私が大学生のころに不景気のあおりを受けて、経営が傾いてしまいました。そこで行ったのが、世で言うリストラです。

それまで親しくしていた社員の人たちが、両親に罵声を浴びせるようになりました。両親が社員の方たちに土下座しているのを目にしたこともあります。「両親のように、頑張っているのに報われない人たちの手助けがしたい」。その思いが、就職活動の根底にありました。

父の会社に融資をしていたメインバンクの面接を受けたこともあります。でも、話を聞いていくなかで、お金の力だけでは、全ての人たちが報われる社会にはできないと、漠然と感じていました。では、なにが社会を変えられるのか。そう考えたときに浮かんだのが、“人”という存在です。

いろいろな人材系の会社の面接を受けたところ、当時のインテリジェンスの代表に「君はそういうことがしたいんだね。応援するから、一緒にどうすればいいか考えようよ」と言ってもらいました。若造の分不相応な大きな目標に難しい表情をされる会社が多かった中で、そんなふうに言ってもらえたのは、インテリジェンスだけでした。

入社時の思いをサービスに

入社後は、人材派遣サービスの営業職としてはたらいていました。しかし、入社2年目に父が病気になってしまい、一度、インテリジェンスを退職することになります。1年半ほど経ち、父の病気が寛解するのとともに復職。
「doda」の立ち上げに参加した後に営業職に戻り、キャリアアドバイザーのマネジャー職を務めました。チーム一丸となって、求職者の方たちのサポートをすることは、とてもやりがいがあったのですが、ふと我に返ります。 「入社時にしたいと思っていたことを、今の自分はできているのか?」と。

それから、経営者である父が、相談相手がおらず悩んでいたことを思い出し、まずは中小企業の経営者の相談相手となるようなサービスができないかと考えるようになりました。その後、社内ベンチャーの立ち上げ制度で事業を提案。事業化が決定し、2011年に専門性を有したプロ人材を活用することで企業が抱える事業課題を解決に導く、「i-common(アイコモン)」を立ち上げました。

この国の企業の99%は、中小企業で成り立っています。雇用のフルサポートをする「doda」は、一部の中小企業からすると金額的に手が出しづらい。私の両親の会社であれば、利用するのに躊躇する価格帯のサービスです。そこを補いたかったというのが、私の思いです。

「HiPro(ハイプロ)」が生まれた背景

「i-common」が生まれて、約10年。立ち上げ当初は、中小企業の支えになりたいと思っていましたが、実際には大企業も含めて、経営の意思決定のサポートを求める企業が非常に多く、サービスは順調に成長することができました。その間、終身雇用の崩壊、テクノロジーの進化や労働人口の減少など、さまざまな社会の変化がありました。加えて、社会を一変させたのが新型コロナウイルスの存在です。

社会の変化のスピードは目まぐるしいものがあります。これからも、なにが企業を襲うか分かりません。このような時代の中、「雇用」という選択肢に限らない、有能なスキルを持った外部人材の存在が、課題解決の鍵になる。しかし、まだまだ、この「雇用」以外の選択肢が認知、活用されていないのが実情です。そこで、現代の社会の“はたらく”を、より強く支えたいと新たに立ち上げたのが「HiPro」です。

「HiPro」は、「スキルを解放し、社会を多様にする。」をパーパスに、可能性を広げたい個人と複雑化する課題に対応したい企業をつなぐサービスです。これからの時代は、企業にも個人にも、“はたらく”の多様性――つまり、“いろいろなはたらき方”を選択できることがより求められる時代になるのではないでしょうか。

自分で選択する「キャリアオーナーシップ」を持ち、スキルを研ぎ澄ましてきた人同士が集まると、自分だけでは想像していなかったことを成し遂げられるものです。私自身、一人では「i-common」も「HiPro」も立ち上げることができませんでした。

パーソルキャリアは「HiPro」など、さまざまなサービスを通して、「キャリアオーナーシップ」が育まれる社会を創造することを目指しています。そして、私たちの目指す社会が、両親の体験してきたような苦しみを生まないように……。引いては、日本の企業の発展の一助となれば幸いです。

  • 掲載している内容・肩書・社員の所属は取材当時のものです。