
語学力以上に大切なことがある!? 海外転職を成功させるコツ
皆さんは、「キャリアオーナーシップ」と聞いて何を想像しますか?「キャリア志向な人」「意識が高い人」、または「成長し続けること」「キャリアアップしていくこと」…… そんなことを思い浮かべるのではないでしょうか。「キャリアオーナーシップを育む社会の創造」を目指すパーソルキャリアは、自分の可能性を信じ、自分の意思でキャリア、そして人生を選択することが、「キャリアオーナーシップ」だと考えています。「キャリア図鑑」では、当社のサービスを通じ、自らが望む「はたらく」をかなえた人たちの事例も交えながら、「キャリアオーナーシップ」発揮のヒントを探ります。
今回は、doda編集長の桜井貴史が、dodaキャリアアドバイザーの池田麗美に話を聞きました。


新型コロナやSNSの普及を受け、海外転職の相談は増加傾向。 一方でかなえるハードルはまだ高い
doda編集長 桜井(以下、桜井):前回のテーマは「自らの弱みを乗り越えた転職」でしたが、今回は「海外転職」に焦点を当てたいと思います。
わたしは過去に、シンガポールやインドではたらいたことがあります。とてもよい経験になりましたが、言葉はもちろん、文化や生活習慣、また労働に関する価値観も異なるため、行ってみて戸惑いも多かったです。国内外問わずグローバルな環境への転職を専門でサポートしている池田さん、最近の海外転職事情はいかがですか?
dodaキャリアアドバイザー 池田(以下、池田):海外ではたらきたい人、特に若者が減っているといわれていますが、「doda」に関しては海外転職の相談は以前に比べて増えていると実感しています。これには大きく分けて2つの理由があると思っています。1つ目は新型コロナです。新型コロナをきっかけに、ワークをライフの重要な要素の1つとして見つめ直し、自分らしい人生を歩むために海外を選択する人が以前より目立つようになってきたと感じています。
2つ目は、SNSの影響が少なからずあると思っています。これまでは、海外経験のある人からの相談がメインでした。最近では、海外に住む人のSNS発信を見てあこがれを持ったという、国外就労や滞在経験のない人からの相談が増えています。
桜井:相談に来る人は増えている一方で、実際にかなえるハードルはまだ高いのが現実だと思います。例えば、国や政府の方針で都度変わるビザの要件などは、自分ではコントロールできませんよね。ほかに、海外転職を目指す人はどのようなことを弊害に感じているのでしょうか?
池田:まずは情報不足。これは、桜井さんがおっしゃったようなビザに加え、どこの国にどのような求人があって、どのように選考を進めるのかなど、海外転職にまつわる情報へのアクセスが限られていることが原因です。そして語学力、最後に異国の地で自分は本当にやっていけるのかという漠然とした不安。この3つですね。
桜井:こうした困難を乗り越え、海外転職を成功させた人の事例がとても気になります。ここからは池田さんに3つ、海外転職の成功事例を紹介してもらいましょう。
海外のほうが性に合っているから海外移住し、現地ではたらきたい
池田:まず1つ目は、海外で暮らしたいという理由から、海外へ転職した事例です。これは前にお伝えした、ライフ軸でキャリアを考えて、外国での生活のほうが自分に合っているため海外転職を選択したケースです。
桜井:海外転職を目指す理由は、現地ではたらきたい、以外にもありますよね。自分らしくいられる場所に住み、はたらくということも、キャリアの選択肢の1つであり、そういった自己決定ができる人ほど幸福感が高いともいわれています。
ところで、住むことに比重が置かれている場合、ビジネスレベルの語学力を持ち合わせていない人もいるのではないでしょうか?
池田:語学力に関して言うと、顧客が誰なのか、というのは大きなポイントになります。これまでの経験から言うと、日本企業が顧客やターゲットならば、日本語での折衝がメインになるため、日常会話レベルの語学力でも転職がかなう可能性はあります。
ちなみに、多くの人が語学力を気にしている一方で、多くの海外企業はその人が異国の地に住んで、はたらくことが本当にできるのか。生活や文化などが合わなかったとすぐに辞めてしまわないか。そういった点をより重視しているように思います。
桜井:語学力はあるに越したことはありませんし、基本求められると考えたほうがいいと思いますが、現在の語学力が転職をあきらめる理由になってしまっている人には朗報ですね!
将来的に海外ではたらきたい。 実現に向けて、今は日本にあるグローバル企業で経験を積みたい
池田:2つ目は、将来的な海外転職を見据え、これまでの経験を活かせる、かつ海外案件に携われる職種にキャリアチェンジし、まずは日本にあるグローバル企業に転職したケースです。
桜井:例えば、海外転職を目指すファーストステップとして、まずは国内でエンジニアの経験を活かしてITコンサルタントにキャリアチェンジし、グローバル案件に携われるコンサルティング会社に転職するなどがありそうですね。一足飛びに海外転職を目指すのではなく、ステップを踏んで目指す道もありますよね。また、グローバルに活躍することがありたい姿ならば、海外転職以外の選択肢もあると思います。
池田:実際、今すぐに海外に行ける人たちばかりでないのが現状だと思います。希望する国や仕事内容の求人が見つからない。行きたい国の方針が変わったためビザが下りづらいといったことも起こり得ます。家族と話し合う必要がある人もいるでしょう。ならば今を準備期間と捉え、日本でできることをする、かなえるために情報収集するという選択は、結果的に将来の自分のキャリアのためになるはずです。
桜井:キャリアオーナーシップは「①自分、そして社会を知る」「②自分で選択する」「③自分のなりたい姿に向けて経験を積む」という3つのサイクルで育まれるともいわれます。海外転職は、「社会を知る」に含まれる、その国の「はたらく」の事情や、かなえるためのステップといった情報の入手が困難な傾向にあります。準備期間に情報収集する1つの手段として、キャリアアドバイザーに相談するという手があることを心に留めておいてもらえるとうれしいですね。
新型コロナにより海外転勤が見送りに。今すぐ海外転職したい
池田:最後は、海外転勤を前提に外国に支社のある国内企業に入社したものの、新型コロナですべて白紙に。今すぐに海外ではたらきたいため、現地採用で海外転職したケースです。もちろん国や企業によりますが、現地採用の求人は業務の幅や裁量権が日本企業よりも広い傾向にあるので、さまざまな経験が積みたい人におすすめです。
桜井:現地採用は、確実にその国ではたらけるということがメリットですから、今すぐに海外ではたらきたい、もう待てない、というエネルギーがある人には有効な選択肢ですね。
池田:前にもお伝えしましたが、海外企業は早期離職を非常に懸念していますので、この国でどうしてもはたらきたいという強い意思は重要視される傾向が強いです。これに加え、職業人生で成し遂げたいことに対する一貫性やお金では買えない経験がしたい、価値を得たいというマインドがあるかも見られている傾向があります。
桜井:意欲や覚悟、前向きな姿勢など企業が見ているポイントは、海外も国内も大きくは変わらないかもしれませんね。
doda編集長の「これがキャリアオーナーシップの種」
桜井:ここまで3つの事例を紹介していただきました。池田さんは、海外転職を目指す人が「キャリアオーナーシップ」を発揮するために重要なポイントは何だと思いますか?
池田:わたしは、まずは「目的」「タイミング」を明確にした上で、「覚悟」を持つことに尽きると思います。弊害や不安を払拭するためにも、「情報収集」もとても重要です。
桜井:海外ではたらくことには、衣食住だけでなく治安や物価も関わってきますから、どう生きたいかがそのまま直結します。それも踏まえ、「覚悟」を持って海外を選択することが重要ですね。
① 情報収集に時間を割く
繰り返しになりますが、海外転職に関する情報は多く出回っていません。だからこそ、情報を持っている転職エージェントのキャリアアドバイザーに相談してほしいと思いますし、転職サイトや企業のコーポレートサイトに掲載されている求人情報に加えて、各国の大使館や領事館のサイトでビザの情報を探ってみてもいいでしょう。動画共有サービスやSNSなどを通じて、海外勤務経験者から現地の暮らしやはたらき方、衣食住や治安といった生の情報を集めることもおすすめです。
② 海外に行く目的を明確にする
はたらきたいのか、住みたいのか。語学力を活かしたいのか、グローバルな業務に身を置きたいのか。目的が何かによって、ありたい姿を実現するために必要な情報や選択肢は異なります。明確になっていないと必要な情報を入手することができず、選択肢も狭まってしまう恐れがあります。情報収集を進めながら、自身の考えや目的を明確にしていくことが重要です。
③ 海外に行きたいタイミングをはっきりさせる
すぐに行きたいのか、2~3年後に行きたいのか、5年後に行きたいのかといった時間軸によっても選択肢は変わってきます。すぐに行きたいならば、今このタイミングでビザの要件を満たせる国の企業へ転職を試みることになるでしょう。5年後に行きたいならば、海外案件に携われる国内企業に転職し、将来的に海外転職にチャレンジすることも可能でしょう。選択肢や可能性を広げる上でも、タイミングについて考えることをおすすめします。