柔軟なはたらき方

育休中の不安を解消し、スムーズな復帰をサポートする
「育休ウェルカムバック制度」

2017年の育児・介護休業法の改正に伴い、最長で子どもが2歳の誕生日まで育休を延長できるようになった。一方で、長期間育休を取得する社員の中には、孤立感や復帰への不安を抱える社員も多くなっている。

パーソルキャリアでは、そんな社員の社会や会社から分断されることによって生まれる心理的な孤立感の軽減や、スムーズな職場復帰の後押しを目的に、2022年10月から育休期間中に就業機会を提供する「育休ウェルカムバック制度」を開始した。

今回は、制度設計を主導した人事サービス推進部の孫美世と横山奈央子、そして一足早くこの制度を利用した社員2人の声をお届けする。

  • 孫 美世 人事サービス推進部 アシスタントマネジャー
  • 横山 奈央子 人事サービス推進部
  • 岡田 里弥 現在育休中
  • 時田 絵里奈 転職支援統括部 CAIT部 エキスパート(キャリアアドバイザー)

社員の育休中の孤立感解消と働きたいという希望をかなえる

「豊富な経験やスキルを持つ育休中の社員に、一時的にでも業務をサポートしてもらうことはできないだろうか」
育休ウェルカムバック制度ができたきっかけは、現場からの声だったという。

そしてその声を聞いた、制度設計の主導者の一人である人事部の孫も、自身の経験から特別な思いを抱いていたという。

孫: 「復職時の不安が大きい」「育休中でも会社との接点や、つながっているという感覚が欲しい」という育休中社員の声が多いことは、人事としても把握していました。
一方で、私自身も第3子の育休期間が1年半あったのですが、長期間社会との接点がなくなることに不安を感じていました。そこで、自分のこの先のキャリアやより効果的な育休の過ごし方を考えた結果、他社で複業を開始しました。複業を通じて、新しい学びや働くことの楽しさを改めて感じられ、とてもよい経験ができました。当時、複業先では、私と同じような育休中社員が複業していたこと、また当社でも複業する社員が年々増えていたこともあり、もし自社で働けたら過去の経験値をそのまま活かせる仕事ができるのに…と思っていたんです。なので、現場から声が上がったときは、制度化したいと強く思いました。

そこで考えられたのが「育休ウェルカムバック制度」だった。育休期間中に就労を希望する社員を対象に、社内で一時就労する機会を提供する。受け入れ部門と、業務の遂行に必要な経験やスキルの保有などの条件を満たす社員を、人事部がマッチングする。就業形態はリモートワークのみで、就労日数や時間は、制度の上限内であれば自由に調整が可能だ。社員のニーズ、無理のない形で就労が可能か、法的な検証なども含め、2021年5月から2022年9月末まで1年以上のトライアル期間を設けた。期間中は27人の社員が制度を利用し、2022年10月に正式導入された。

トライアル期間中に制度を利用した社員からは、好意的な声が多く寄せられたと、人事の横山は言う。

横山: 復職が楽しみになった、育休中は孤独だったけれど、社会との接点が持てたなど、ポジティブな感想が多かったですね。また、復帰後も管理職を続けられるか、不安や迷いがあったが、実際に育児との両立を体験してみて、これまでどおり頑張っていきたいという気持ちに変わったとのコメントをくれた社員もいて、この制度を始めて良かったなと思っています。

実際に、トライアル期間に制度を利用した2人の社員に、利用を考えたきっかけや感想を聞いた。

【社員体験談】短時間でも働くことで気分転換になり、復帰が楽しみになった

1人目:岡田 里弥(育休前は採用・転職支援の業務担当)

2021年11月から育休を取得している岡田。2022年の8月から11月末まで制度を利用し、人材開発部で中途入社者や異動者に向けて、営業活動のロールプレイングの練習相手などを担当したという。

岡田: 初めての育児ということもあり、出産後はつらいことのほうが多かったですね。一番の驚きだったのは、思ったより自由がないこと。24時間、子どもから目を離せません。でも子どもを見ながらでも、頭の中ではあれこれと考えてしまい、常にモヤモヤしている状態でした。

近くに頼れる家族や親戚もおらず、会話ができるのは夫だけ。気分転換に友人を誘って出かけたいと考えても、同僚の忙しさも分かっているため、自分から連絡することはできなかったという。また、別の点でもモヤモヤが募ったという。

岡田: 母親になって、自分の名前で呼ばれなくなったことも、モヤモヤの一つでした。子どもの名前を聞かれて、“○○ちゃんママ”と呼ばれると、個人として認められていないような感覚になりました。そんなタイミングで、育休ウェルカムバック制度の案内を受け取ったんです。夫が在宅で育児ができるタイミングだったこともあり、「短時間でも働きたい」と思いました。

当初は、勤務日数を抑えて1日6時間ペースで働き始めたが、夫が1人で子どもの相手をするのが大変そうだったため、週に3日、1日3時間程度の勤務に落ち着いた。そして、少しでも夫の負担を減らせるよう、朝早めに起きてできるだけ始業前に家事をこなす、仕事で子どもと離れたあとはたっぷり遊ぶ時間をつくるなどの工夫もしてきたという。

岡田: 働くためには、夫との連携は欠かせません。何に感謝をしているのか、その都度具体的に気持ちを伝えるように意識していました。夫は協力的でしたが、私が勝手に申し訳なさを感じてしまっていたんです。仕事が終わったあとに、子どもが私を見つけると驚くほど速いスピードでハイハイしてきて抱っこをせがむので、やはり寂しさもあったのだと思います。

仕事をすることで、大きな気持ちの変化があったという。

岡田: 夫以外の人と話せること、会社の雰囲気に触れられることで不安が和らぎました。日々子どもとだけ接していると、復帰できるのかな、大丈夫かなと不安だったけれど、復帰できそうだな、楽しみだなという気持ちに変わりました。ロールプレイングの練習は楽しかったけれど、一方で早く私も直接お客さまに営業活動をしたいという意欲もわいてきたので、有意義な機会だったと思っています。

【社員体験談】新たな業務を経験し、スキルアップできた

2人目:時田 絵里奈(育休前、育休後もキャリアアドバイザー業務を担当)

2人目は、制度利用後に職場復帰した時田絵里奈。2020年10月に2人目の産休に入り、2021年11月から2022年4月末までの6カ月間、トライアル期間中に制度を利用した。利用した理由の一つは、最新情報をキャッチアップしておきたかったからだったという。

時田: 仕事で使う社内システムは定期的に変わります。また、採用・転職市場も日々変わっていくので、常に最新情報をキャッチアップする必要があります。育休のあと、いきなり復帰をするよりも、あらかじめ慣れておけば、復帰がしやすくなるだろうと思って利用することを決めました。

また、これまでとは違う部署の仕事を経験できることも魅力だったという。

時田: もともと、キャリアアドバイザーとして転職希望者の相談を受け、転職を支援する業務を担当していたのですが、制度利用時は、違う部署でカウンセリングに同席してアドバイスをする業務を担当しました。私にとってはほかの方のカウンセリングを見ることによっての学びもあり、この経験が現在の仕事にも活きていると思っています。

制度利用時は、週に2~3日、4~5時間のリモート勤務。就業中は、上の子どもは保育園に預け、下のお子さんは一時保育などを利用した。突発的に子どもが熱を出すなどの不測の事態に備えて、業務を代わってもらえる人を見つけておくなどの工夫をしていたという。

制度を利用して良かったことについては、次のように語る。

時田: ほかの人のカウンセリングを見られたことで自分のスキル向上につながったこと、またこれまでの私のスキルにも合致していたため、受け入れ部署に対しても貢献できたのではないかと思っています。2022年の5月から職場復帰しましたが、毎日仕事でシステムを見ていたおかげで、すんなり業務に入っていくことができました。

制度利用は選択肢の1つ。社員それぞれが思い描くキャリアをサポート

制度を利用した岡田、時田は、育休中やこれから育休を取得する人には、育休期間中の選択肢の一つとして、制度利用を検討してみることを勧めたいという。

岡田: もし子どもの預け先が見つかるのであれば、ぜひ制度を活用してほしいなと思います。一時保育の情報も、調べるといろいろあったので、アンテナを立てていると見つかることも多い。モヤモヤするよりも、実際に行動してみると状況を変えることができます。特に、私の場合は母親の自分だけでなく、個の自分を取り戻せたのは大きかったと思っています。

時田: 会社が用意している制度ではありますが、どう活用するかは自分次第です。実際に活用して、自立して考えられる人のための制度だと感じました。仕事のお膳立てを期待しているとギャップを感じるかもしれません。目的をすり合わせたあとは、その現場でどう働くかは、自分で考える必要があります。指示を待つのではなく、自分で仕事を作っていく姿勢があれば、今後のキャリアに活かかせる制度だと思います。

 最後に、今後の取り組みについて、人事の横山に聞いた。

横山: 現在の受け入れは3部門ですが、対象の事業部を広げることで、より多くの希望者が就労できるよう拡充していく予定です。また、長期育休を取得する男性社員も増えていますので、男女ともに、長期のブランクからの復職の不安を解消できるよう、制度の周知、活用促進にもよりいっそう力を入れていきたいと考えています。

育休期間中を心身ともに健やかに過ごす機会を提供するだけではなく、希望する社員には、今後のキャリアにつながる選択肢を増えるようサポートを行う。これらの取り組みにより、社員が復職後もキャリアオーナーシップを発揮して意志ある選択を応援できる環境を作りたい。この育休ウェルカムバック制度の利用者が増えることも、その環境づくりへの第一歩といえるだろう。

※掲載している内容・社員の所属は取材当時のものです。

編集:パーソルキャリア広報部 ライター:尾越まり恵

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