柔軟なはたらき方

パーソルキャリア現役社員で市議会議員 
~人材サービスで培ったスキルを公職で活かす~

近年広まりつつある副業。パーソルキャリア内でも副業をする社員は増えてきているが、公職を副業とするのは珍しい。パーソルキャリア関西オフィスに所属する水本千恵は、公職(奈良市議会議員)と掛け持ちではたらいている。そのきっかけは、「子どもの不登校」であったという。なぜそれが公職との兼業につながったのか、水本自身に聞いた。

子の不登校で考えた「自分が社会にできること」

奈良市役所にて

水本が市議会議員に立候補したきっかけは2019年にさかのぼる。当時水本はキャリアアドバイザーを育成する部署に所属していた。10年以上の現場経験をフル活用し、後輩の育成に奮闘する日々。そんな中、小学校に上がった長男が、「学校に行きたくない」と言い始めた。1年生の間はどうにかなだめて学校に連れていっていたが、3年生になった春、学校に行けない日が続くようになり、長男の担任に相談したことがあったという。

水本: 担任の先生は、子どもの考え方を尊重して柔軟に対応してくださっていました。でも一方で、「最近は学校に毎日通える子のほうが減ってきている」と言われ、子どもたちを取り巻く環境が私の子どものころから大きく変わってきていることを実感しました。

水本は、どの子どもも不登校に悩む可能性があること、また現場では先生の役割が増えているのに、体制が整っていないと課題を感じた。そして、パーソルキャリアで培った人材サービスの知識やキャリアアドバイザーの経験を、違った形で活かせる方法はないのか……と考え始めた。

女性が少ない。同年代もいない。そこで私にできること

水本が家族に自分の経験を活かす方法を相談すると意外な一言が返ってきた。

「市議会議員の選挙があるから出たら?」

唐突な提案だったが、「そういう道もあるんだ」と思い、まずは選挙の説明会に足を運んでみた。そこで水本は議会構成のいびつさに驚いたという。

水本: 当時、39議席のうち女性はたったの6人。しかもみんな60歳前後で、30~40代がいないことに違和感を覚えました。それで、「もしかしたら30代で子育て真っ最中、人材サービスの経験がある私にもできることがあるのでは」と思ったんです。

不登校を通してぼんやりと考えていた「子育てや教育に関する施策と自分の感覚にズレがある」という疑問が、違う形で明確になってきた。子育て世代が発言したほうが、より良い社会にできるかもしれない。そう思うと心は立候補に向かっており、不思議とハードルを感じなかったという。その理由を水本は次のように話してくれた。

水本: 自分が仕事としてきた転職支援と同じ感覚だったからだと思います。次が決まれば行けばいい、でも落ちたら今の仕事を続けていこうと。

もちろん選挙活動は初めて。仕事を続けながら挑戦できた背景には、社内外からの協力があったと水本は振り返る。

水本: 最初の協力者は夫の母で、ポスター貼りを一緒に回ってくれました。ママ友にもお願いしてみたらSNSで拡散してくれてうれしかったですね。コロナでリモートワークになっていたので通勤時間も節約できて、なんとかやれました。

パーソルキャリアの同僚や上司も前向きに背中を押してくれた。

水本: みんなに選挙に挑戦しますと言ったときは驚いたと思いますよ。「もし当選しても辞めずに副業として兼務でいきたい」と、前例のない希望も一緒に伝えましたし。でも同僚も上司も「やってみたら」「何が必要か分かってきたら言って」と後押ししてくれました。

そして見事、2021年7月の市議選に当選。仕事と公職の二足のわらじ生活が始まった。

選挙活動中も協力してくれたママ友の存在は大きかった

業務スキルで貢献も。パーソルキャリアだからできること

市議会議員の仕事でまず頭を悩ませたのは、スケジュール管理だった。議会の予定や公務での拘束時間も直前まで分からず、パーソルキャリアでの予定が立てられない。しかし上司に相談し、なんとか調整しながら2021年8月~12月の5カ月はフルタイムで勤務し市議会議員の業務も両立した。
その後、2022年1月から契約社員に雇用形態を変更し、週2日だけの出社となった。それでも2つの仕事には相乗効果もあり、続ける意義を感じている。

水本: パーソルキャリアは応援してくれる会社ですが、公務で週に何日も空けるので、正社員のまま続けるのは難しいかなと雇用形態を変えました。フルタイム勤務ではないですが、選挙を応援してくれたみんなへの協力ができると思っています。

一方で、市議会は一般企業とはまったく違う世界。常に片足は一般企業に置き、市民のみなさんと同じはたらく感覚をいつまでも持っていたいです。

兼業だからこそ、自分の経験を活かせる。新しいはたらき方が、水本には見えているようだ。
また、実際にパーソルキャリアで培ったスキルが公務で活かされたことも多かったという。

水本: 一番役立っているのは人材や組織関連の知識です。学校の環境だけでなく政策全般において、「女性の活躍」「ダイバーシティ推進」など就労に関する知識や考え方が役に立っています。また、半期に1度は自身の業務の目標設定をするパーソルキャリアでの経験から、適切な目的と目標を設定してPDCAサイクルを回すというスキルも議員の活動に活かせていると思います。

さまざまな企業や転職希望者とコミュニケーションを取ってきた水本だったからこそ、身につけられた知識を新しい「はたらく」につなげることができたのだろう。

実現のコツは「まずは周りに話してみる」

公職との副業は珍しいが、水本にとってはあくまで日常と地続きの感覚。一見スーパーウーマンにも思えてしまう水本だが、新卒時代の失敗を振り返り、「入社当時は同期の中でも最下位を争うほどの営業成績で、中身はポンコツなんですよ」と笑う。そんな水本がやってみたいことを実現するコツは「最初の1歩は、まずは周りに話してみる」

水本: 私は準備するとどんどん足がすくむので、まずは『言ってみる』を実践しています。

議員になったのも、始まりは家族に考えを言ってみたこと、議員になってもパーソルキャリアを続けたいと上司や同僚に言ってみたこと、これが今の水本につながっている。

水本: やりたいことを口に出して言ってみると、賛同して協力してくれる人が出てくるし、周りの反応を見ることで自分の考えも整理できます。思い立ったが吉日ですね。

とはいえ、自分が発言したことに「誰も賛成してくれなかったらどうしよう」と不安になることもあるという。

水本: でも言ってみるだけなので(笑)。失敗しても、誰も痛みを感じたりはしないし、死ぬほどのことではないですから。

そもそも、周りに行動派の先輩たちがいたのも大きかったという。特にパーソルキャリアの先輩に言われた「失敗しても、行動したという事実は変わらない」という言葉が水本を励まし、今も支えてくれているという。

自分らしい「はたらく」を持つこと -キャリアオーナーシップ-

「公職での副業」は誰にでもできることではない。しかし、誰にでも起こり得ることをきっかけに、水本が自分らしい「はたらく」を考え、自然と生まれた答えだった。パーソルキャリアでは今後も、活動の幅を広げていく水本を応援していく。同時に、一人ひとりの「はたらく」に寄り添い、さまざまなキャリアオーナーシップの形をともに作っていきたい。

※掲載している内容・社員の所属は取材当時のものです。

編集:パーソルキャリア広報部 ライター:明知 真理子

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