ミッション推進

家族の病を機に“はたらく意義”を再定義。
新人CAがキャリアオーナーシップを発揮するまで

本連載は、自分の可能性を信じて自らキャリアを切り開く「キャリアオーナーシップ」を発揮した社員の取り組みを紹介。人それぞれ異なる価値観やライフステージの変化などにより多様化するはたらき方のなかで、そのときどうアクションしたのか。はたらく社員の奮闘ぶりをお届けします。

北村 勇人
2019年新卒入社 dodaキャリアアドバイザー・神奈川エリア担当

入社前から希望していたキャリアアドバイザー(CA)になった北村勇人は、IT業界の転職希望者の支援をしながら充実した日々を送っていた。ところが、入社2年目の春、たった一人の家族に病気が発覚。看病との両立で業務時間を短縮せざるを得なくなり、心身ともに疲弊し、次第に“はたらく意義”を見失った。 そんなつらい状況であったにもかかわらず、あることがきっかけで北村のパフォーマンスは向上。2022年には自社のミッション推進を目指し、自身の仕事において圧倒的なバリューを体現した社員を表彰する制度「Mission Value Award」でブロンズ賞を受賞するなど、見事逆境を跳ねのけた。そんな「キャリアオーナーシップ」を体現する北村に、そこに至るまでの試行錯誤や、はたらき方に対するスタンスの変化を聞いた。

「接客が好き」仕事を覚えるのに夢中になった新人時代

北村がCAを志望した理由は「接客が好きだから」。その思いはどこから来たものなのか。

北村: お客さまの潜在的な悩みや要望を引き出すことに貢献できる接客の仕事に就きたい、その一心です。原体験となったのは、大学時代に経験した某ブランドショップのアルバイトでした。私が提案したコーディネートをもとに商品を購入してくださったり、遠方からわざわざ私に会いに来てくれるお客さまがいたり…。このような経験が仕事をする上でのモチベーションにつながりました。このアルバイト経験を通じて、“転職”という人生の大きなイベントに介在し、人をサポートできる存在になりたいと思うようになったのです。

現場で転職希望者のカウンセリングをするようになってからも、その気持ちは変わらなかったという。

北村: 新人なので苦労することもありましたが、自分が希望した接客の仕事に就けたことがうれしくて、純粋に楽しかったです

「生きるために」母の病気で仕事の価値観が変化

北村が仕事への向き合い方を見直さざるを得なくなったのは、入社2年目となる2020年のゴールデンウイーク。コロナ禍での1回目の緊急事態宣言のさなかだった。

北村: 自宅で仕事をしているときに、突然母が倒れました。病名はくも膜下出血と脳梗塞で、体には重い障害が残ってしまった。突然のことに、ただただショックが大きかったです

北村は母親と二人暮らし。頼れる家族がいない中、精神的な負担を抱えながら一人で母を看病し、入院先を探す日々が始まった。

北村: 母は気管切開をしているので、受け入れてくれる病院はほとんどありませんでした。受け入れ先の病院探しは長期化し、その間は会社のフレックス制度を活用して、午前中は病院で面談、午後から仕事をする生活を送りました

生活が大きく変わると同時に、仕事に対する考え方にも変化が起きたという。

北村: 母が倒れる前は現場に出て間もなく、仕事を覚えることに精いっぱい。大変なこともありましたが、「転職希望者とのカウンセリングが楽しい」というスタンスではたらいていました。状況が変わってからは、母の入院費を払い続けるにははたらかないといけないし、母が目を覚ましたときに安心して暮らせるだけの経済力がほしいと思うように。仕事に対する考え方が、「楽しくはたらく」から「生きるためにはたらく」に切り替わりました。

勤務時間を短縮せざるを得ない状況下でも成果を出したい。そう思った北村が取り組んだのが、業務の洗い出しによる効率化だった。

北村: まずは、必要な業務と削れる業務、それぞれにかかる時間をExcelで一覧にし、効率化を図ったら何分削れるのかを可視化しました。上司やマネジャーに相談しながら業務の優先順位をつけ、その後の「確保できた時間をどう活かすか」については自分で考える。この作業を繰り返しました。

業務効率化シート(北村提供)

業務の優先順位をつける際、北村がとくに重視したのが、カウンセリングの時間をしっかり取ること。そのためにオペレーションの自動化を進めるなどして時間を捻出した。

さらに、転職希望者への支援をより確実にするための土台作りも行った。採用課題を抱える企業に転職希望者を紹介する「リクルーティングアドバイザー(RA)」として活躍する同期に協力してもらい、部署をまたいで連携し、情報共有できる仕組みを作ったという。そしてもう一つ、北村が力を入れたのが、会社に蓄積されているノウハウの活用だ。

北村: 私はゼロから何かを作り出すのは苦手ですが、その分情報を集めるのは得意です。そこで、先人の知恵を参考にさせてもらうことを思いつきました。たとえば、社内でノウハウや仕事事例を共有する「ウィークリーレポート」というツールの活用もその一つ。気になるトピックスを検索しながら過去1年分を読み込みました。

新人という立場も最大限に活用したそう。相談から実際の転職活動に移った転職希望者の割合を示す「稼働率」が高い先輩や同期に「どう伝えたらいいか分からないので、カウンセリングを見せてください!」と頼み、現場に同行してその手法を学んだ。

北村: これまで私がしていたのは、転職希望者の話をマニュアルどおりに聞いているだけだったと気づきました。その場は和やかな雰囲気になるけど、転職希望者の背中を押すことにはつながらなかった。一方、先輩や同期のカウンセリングは、前向きに転職活動を進めてもらうことに注力していて、自分との質の違いを感じました。

その後も他業界の転職支援を行う部署から施策を聞いて、IT業界で活かせそうなものを取り入れるなど、できることは何でも試した。

取り組み方は変化しても原点は変わらない

業務効率化でカウンセリングに時間を割けるようになった北村は、先人たちのノウハウを吸収して転職希望者支援の質を上げることに尽力した。

北村: 転職を考える際の動機は、人によって異なります。きっかけとして分かりやすく大きな出来事を話される方もいますが、そこだけにとらわれず「その人が本当はどう思っているのか」に視点を置くようにしています。たとえば、私の場合「母が突然倒れて、すごく大変」と話すと、聞いた人はそこにばかり目がいってしまいがちに。しかし、実際に抱いていたのは「こういうふうにはたらきたいけど、どうしたらいいんだろう」という仕事に対する悩みでした。まだ、たった入社2年目ではありましたが、家族の病気を機に一度立ち止まって考えたことで、本質的なことに目を向けられるようになったと思います。

これまでは「人生経験が少ない自分がカウンセラーとして相談を受けていていいのだろうか」と悩むこともありました。しかし、ご家族の病気や家庭の事情で転職を考える方も少なくありません。今回の出来事を経て「私だったら共感できるから、任せてほしい」と思えるように。自分の発言に自信が持てるようになり、やっと土俵に立てた気持ちでいます

転職希望者にも前向きに転職活動に取り組んでもらえるようになり、「次の会社に入社するのが楽しみ」と言われる機会が増えた。北村自身も再び仕事を楽しめるようになったという。そして、2021年にはかつて同期が受賞した神奈川エリア部のMVPに選ばれ、その後もキャリアオーナーシップを発揮してさまざまな賞を受賞した。北村が自身のはたらき方を確立するために行動できたのは、程よい距離感で見守っていた職場のメンバーの存在も大きかったという。

北村: 上司や先輩は、私が相談をしたら親身になって対応してくれましたが、基本的には今までどおりに接してくれました。「大変だね」と特別視されることがなかったので、私も仕事にコミットできたのだと思います。

時間の使い方や仕事への向き合い方など変化した部分もあるが、「自分の原点である『接客が好き』という気持ちは変わらない」という。「改善すべき点はまだある」と語る北村の取り組みは変わっても、根底にあるものはきっと変わらないだろう。
※掲載している内容・社員の所属は取材当時のものです。

編集:藤田佳奈美、パーソルキャリア広報部 ライター:畑菜穂子 (制作:プレパラート)

最新記事キャリアオーナーシップに関する最新の取り組みをご紹介!