キャリア図鑑 vol.7

キャリアオーナーシップのヒント

「自分に自信がない」。そんな不安を乗り越え転職するには?

皆さんは、「キャリアオーナーシップ」と聞いて何を想像しますか?「キャリア志向な人」「意識が高い人」、または「成長し続けること」「キャリアアップしていくこと」…… そんなことを思い浮かべるのではないでしょうか。「キャリアオーナーシップを育む社会の創造」を目指すパーソルキャリアは、自分の可能性を信じ、自分の意思でキャリア、そして人生を選択することが、「キャリアオーナーシップ」だと考えています。「キャリア図鑑」では、当社のサービスを通じ、自らが望む「はたらく」をかなえた人たちの事例も交えながら、「キャリアオーナーシップ」発揮のヒントを探ります。

今回は、doda編集長の桜井貴史が、dodaキャリアアドバイザーの田中俊に話を聞きました。

doda編集長 桜井さん
桜井 貴史(さくらい・たかふみ)
doda編集長
田中さん
田中 俊(たなか・しゅん)
dodaキャリアアドバイザー

転職は当たり前の時代に。一方で、多くの人は「自分に転職は無理なのでは?」と思っている

doda編集長 桜井(以下、桜井):前回は「ハイクラス人材のキャリアチェンジ」に焦点を当てましたが、今回はがらりと視点を変え、「自らの弱みを乗り越えた転職」をテーマにしたいと思います。

近年、転職が一般化しつつありますよね。また、成長につながる、スキルアップできるなど、転職に対するイメージも以前よりポジティブなものになってきていることがパーソル総合研究所の調査※1からも分かっています。しかし、これまでの自分の経歴に自信が持てず、「自分は転職できるのだろうか」と不安に感じている人は少なくない、というのが現実だと思います。今まさに第一線で転職をサポートしている田中さん、いかがですか。

dodaキャリアアドバイザー 田中(以下、田中):「自分には転職なんて無理なんじゃないか」。そう思っている人にわたしはたくさん出会ってきました。一方で、桜井さんが言うように、コロナ禍以降、転職に対するハードルは以前と比べて低くなっています。結果、これまで相談に来る人は転職を決意した人が大半でしたが、今は、「こんな自分でもできるのか?」「どのようなところにならできそうか?」といった形で相談に来る人が非常に増えています。

桜井:「コロナ禍」と田中さんが言いましたが、新型コロナを機に、はたらき方やはたらく個人の価値観が大きく変わりましたよね。新型コロナは、自分のキャリアを見つめ直すきっかけになったと言えます。そのため、転職の可能性や自らの市場価値を見極めるために、キャリア相談に来る人が増えたのでしょう。

ここで田中さんにお聞きしたいのは、転職相談に来る人たちは、自分の経歴やキャリアの何に対して悲観的となっているのでしょうか? そして、それをどのように乗り越え、納得のいく転職を実現しているのでしょうか?

田中:桜井さんの質問に答えるために、転職成功事例を3つ紹介したいと思います。

※1:株式会社 パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査」https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/spe/pgstop/pgs/values06/ 

ブランク期間が引け目に ―離職期間がある自分を採用したい企業なんてないのでは?

田中:まず1つ目は、はたらいていない期間、いわゆる「ブランク期間」があることに対する劣等感です。例えば、家族のケアをするために数年離職していたケースでは、「ブランク期間がある自分を採用したい企業なんてあるのだろうか?」と自分の経歴に自信が持てなくなっている人が非常に多くいます。

桜井:ブランク期間がある人はそう考えがちですよね。しかし、出産の時期によっては職場復帰をあきらめて離職せざるを得ない、もしくは超高齢化社会に突入した今、両親の介護で一時的に離職せざるを得ない、といったことは誰にでも起こりますよね。田中さんはこういったケースでは、どのようにサポートしていますか?

田中:わたしは、ブランク期間をポジティブに捉え直す、ということに転職希望者と取り組んでいます。家族のケアを例にとると、転職希望者からは、相手を思いやることの大切さを学んだ、相手の話に耳を傾け、理解しようとする傾聴力が身についたといった声が上がってきます。

桜井:それは業種、職種に関係なく活かすことができるポータブルスキル※2ですね。雇用の流動性が高まっている、変化の激しいVUCA※3時代のビジネスシーンでは、コミュニケーション力や環境適応力といったポータブルスキルもとても重視されていますね。

田中:おっしゃるとおりです! 自分では引け目に感じていることも、考え方次第で強みに変えられるということが分かり、自信を取り戻すことができた人たちを数多く見てきました。その結果、未経験業界に転職した人や、年収アップをかなえた人もいますよ。

※2:職種の専門性以外に、業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上のスキル https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_23112.html 
※3:Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った言葉。変化が激しく、将来の予測が困難な状態を指す

特定業界での経験しかない ―自分の市場価値は低いのでは?

田中:続いては、特定業界での限られた経験しかない自分へのマイナス評価です。「自分はこれしかできない」「ほかにできることがない」といったように、自身の市場価値を根拠なく低く見積もってしまい、それが一歩踏み出す弊害になっているケースです。

桜井:特定の業界一筋で経験を積んできたことは、アピールポイントになり得ますよね。

田中:はい。実際、業界経験が特に評価される業界というのがあります。製造業や不動産業、IT業界が一例です。つまり、特定の業界では、これまで積み重ねてきた限られた経験や培ってきたスキルが、とても重宝されるということです。それを認識することができると、転職成功にもつながるでしょう。

桜井:これは、キャリアオーナーシップを発揮するための大事なステップ、「自分を知り、社会を知る」ですね。自分が身を置いている業界で、自分のこれまでの経験やスキルはどれほどの価値があるのか。自分が身を置いている業界では今どのようなこと、例えば人材不足感やはたらき方の変化、賃上げや異業種進出の動きなどが起きているのか。自分、そして社会について理解を深めることが、自らの意思で、納得のいくキャリアを選ぶことにつながりますよね。

田中:わたしがサポートをした中で、「自分を知り、社会を知る」ことができた結果、業界内の大手から内定をもらったり、年収が上がったりした人もいますよ。

大手への就職に失敗、転職もうまくいかず ―自信喪失、どうしたらいいか分からない

田中:最後は、大手に入れなかったことに対するコンプレックスです。大手への就職に失敗し、内定が出た企業に入社。しかし納得できず、大手への転職を試み、次から次へ応募するも軒並み失敗。本人は、周囲から認められたい一心で頑張り続けているのですが、うまくいかず転職に対するモチベーションが下がっていくパターンです。

桜井:ポジティブに考えると、目指すものに対して、何度でも立ち向かう姿勢は強みとも言えますよね。

田中:そうなのです。そして、その原動力は、大手に入れなかったというコンプレックスです。わたしはこの原動力が大手だけでなく、例えば中小やベンチャーなどさまざまな方向に働くと、キャリアの選択肢が広がると思っています。

桜井:改めてどのような仕事がしたいか、から企業を考えてみるということですね。それができれば大手にこだわる必要がなくなり、コンプレックスも克服できますね。どうしても大手があきらめられない、ということであれば、これから経験を積み、将来的にやりたいことができる大手に再チャレンジする、というキャリアプランもあります。

田中:おっしゃるとおりです! ITコンサルになるために、大手コンサルに行く必要はありません。中小で経験を積み、その経験を糧に大手に転職するのも1つのキャリアの選択肢です。実際そのように決断し、納得感を持って中小に転職した人もいますよ。

桜井:これからますます転職が一般化していく中で、はたらく人生も長くなるため、さまざまなチャンスが巡ってくるでしょう。そのチャンスを逃さないためにも、自分の可能性とキャリアの選択肢を広げていくことが大切ですね。

doda編集長の「これがキャリアオーナーシップの種」

桜井:ここまで3つの事例を紹介していただきました。田中さんは、自分の経歴に自信がない人が、「キャリアオーナーシップ」を発揮するために大切なことは何だと思いますか?

田中:わたしは、ネガティブをポジティブに変換する「リフレーミング」と、自分の可能性を広げるための「情報収集」だと思います。

桜井:そうですね。「キャリアオーナーシップ」を発揮するためには、自分に自信を持つ、それが難しいなら、今の自分を受け入れてあげることが大切だと思います。その手段として、「リフレーミング」や「情報収集」は有効ということですね。

①ネガティブをポジティブに変換して考えてみる

事実を変えることはできませんが、解釈を変えることはできます。過去の選択が自分を作っているのですから、真っ向から自分を否定するのではなく、この経験があったからこそ、これならできそうだ、これならできるかもしれない、と肯定的に考えてみてください。少し視点を変えるだけで、可能性は広がるはずです。自分一人ではできそうもない、ということであれば、周囲のポジティブな人に話してみると、新しい視点に出会えるかもしれません。

②良質な「はたらく」に関する情報を集める

自分には無理だと決めつける前に、「自分を知り、社会を知る」ために情報収集をすることは大事だと思います。企業から直接スカウトが届く転職サービスに登録すると、企業があなたのどのような経験やスキルを評価しているか、どういった業種の企業があなたを採用したいと思っているかなどが分かるでしょう。また、田中さんのようなキャリアアドバイザーに相談すれば、キャリアの棚卸しを通じたあなたの強みや伸びしろ、また転職市場の動向を知ることができます。

編集:パーソルキャリア広報部 

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