キャリアチェンジを望むハイクラス人材の転職成功の秘訣とは?
皆さんは、「キャリアオーナーシップ」と聞いて何を想像しますか?「キャリア志向な人」「意識が高い人」、または「成長し続けること」「キャリアアップしていくこと」…… そんなことを思い浮かべるのではないでしょうか。「キャリアオーナーシップを育む社会の創造」を目指すパーソルキャリアは、自分の可能性を信じ、自分の意思でキャリア、そして人生を選択することが、「キャリアオーナーシップ」だと考えています。「キャリア図鑑」では、当社のサービスを通じ、自らが望む「はたらく」をかなえた人たちの事例も交えながら、「キャリアオーナーシップ」発揮のヒントを探ります。
今回は、doda副編集長の山口義之が、dodaキャリアアドバイザーの田村春仁に話を聞きました。
広がる、専門性やスキルを有する人たちの転職。一方で、キャリアチェンジしづらいと 感じている人も
doda副編集長 山口(以下、山口):前回の対談は「女性の『はたらく』」をテーマにしていましたが、今回は、昨今、TVCMやWeb広告などでもよく見聞きするようになった“ハイクラス人材”に注目したいと思います。見たこと、聞いたことはあったとしても、“ハイクラス人材”がどのような人たちなのか、分かりづらいですよね。パーソルキャリアでは、豊富な経験や専門的なスキルを有し、しかるべき評価や待遇を受けている人たちのことをハイクラス人材と定義しています。
dodaキャリアアドバイザー 田村(以下、田村):わたしは、そのような高い専門性やスキルを持つ高年収帯の人たちの転職を専門にサポートしているのですが、転職市場ではハイクラス人材の転職が活発化していると感じています。
山口:企業はリーマンショック以降、新規事業やIT化に力を入れるようになり、即戦力としてのハイクラス人材の需要が高まりました。それに伴い、自分の力を社外で試したいと考える個人も増えました。これが、市場拡大の根本にありますね。
さらにコロナ禍を経て、多様なはたらき方が市民権を得た結果、自分ではたらき方を選択したいと思う人が増え、ハイクラス人材をはじめ、多くの人が転職を視野に入れ自分のキャリアを考えるようになってきています。
田村:最近では企業が、中間管理職やその道のエキスパートを中途で採用する動きも顕著ですよね。例えば、これまで新卒採用がメインだった総合商社や銀行が、異業種から積極的に中途採用を行うなど柔軟な発想が生まれ、それに伴いハイクラス人材の転職がさらに増えている印象です。
山口:そうですね。特にハイクラス人材にとっては、自分の経験やスキルを最大限に活かせる転職の機会が広がっているといえるでしょう。
田村:同感です。しかし、現場でサポートしていてこんなことを感じています。
ハイクラス人材は、現職での地位や責任の重さ、さらには転職で年収が下がる可能性などを考えると、キャリアチェンジしたくとも一歩踏み出す勇気や、誰かに相談する勇気が出ない。キャリアへのモヤモヤを自分の中に抱え込んでいる人が多い傾向にある、と。
山口:ハイクラス人材の転職は広がっているけれど、キャリアチェンジに踏み切れない人も多くいるということですね。ここからは田村さんに、キャリアチェンジに挑戦した転職事例を紹介してもらいながら、ハイクラス人材がキャリアオーナーシップを発揮するためのヒントを探っていきましょう。
現職が忙しすぎて夢を追えない―年収を妥協せず時間に余裕のあるはたらき方を実現
田村:まずは、現職とは別に夢があり、それを実現するには今の仕事が忙しすぎる。年収は下げず、時間に余裕のある職種にキャリアチェンジし、夢をかなえるために勉強したり、副業したりする時間を確保したいというケースです。
山口:自分が望むキャリアを切り拓いていくためのはたらき方を手に入れたい、ということですね。
田村:はい。この場合、多忙な同職種ではなく、これまで培ってきた経験やスキルを活かしながらも、自由な時間を手に入れられる他職種(未経験職種)に転身する、というアドバイスをしています。
未経験職種への転職と聞くと、一から新しい仕事を覚えなければならないなど不安に感じるかもしれません。しかし、例えば営業から営業事務など、これまでの経験を活かしながらはたらき方を変える方法はいくらでもあります。ただ、ここで1つ問題になるのが、年収です。一般的に未経験転職は、年収が下がる傾向にありますから…。
山口:転職で年収を下げたくない。これは誰しもが思っていることですよね。でも、よく考えてみてください。どんな転職にも未経験要素は必ず含まれます。例えば、営業職として、既存顧客を重視している現職から、新規顧客を重視している企業に転職した場合でも、ターゲットとしてきた顧客という観点では未経験ともいえるでしょう。
ハイクラス人材の1つの強みは、経験やスキルが豊富だということです。これまで積み重ねてきたことをかみ砕き、それらがどのような局面で活かせるかを企業にアピールできれば、年収が上がる可能性はあるはずです。田村さん、いかがですか?
田村:山口さんのおっしゃるとおりです。キャリアの棚卸しをていねいに行い、未経験職種であっても役立つ既存の経験やスキルを明確にした結果、年収が50万円以上上がった人もいます。
今の仕事に興味が持てないけど、何がしたいか分からない。第三者に相談してみる
田村:続いては、今の仕事に興味が持てない。だからといって、ほかにやりたいことがあるわけでもない。ただ、年収は下げたくないというケースです。こういった場合は、職種は大幅に変えず、心躍るような商材を扱っている企業に転職することをおすすめしています。
山口:まずは、興味・関心のある商材やサービスを提供している企業に転職するというゴールを定め、そこに行き着くまでにステップを刻むということですね。
田村:そのとおりです。ある程度先が見通せていないと、年収を軸に転職先を決めることになりかねません。その場合、納得感を持ってその仕事を選べていない可能性が高く、結果、転職を後悔しかねないでしょう。だからこそわたしは、胸の内を明かさない傾向が強い、ハイクラス人材の本音、例えば現職の何が不満か、何が満たされれば満足感を得られるのか、要するに今後自分のキャリアをどうしていきたいのかを引き出すことが重要だと思っています。
山口:キャリアを重ねたハイクラス人材ほど、仕事に対してこうあるべきと考えがちです。だからなおさら、本音が言いづらい。弱い部分を見せられないのでしょうね。その気持ち、よく分かります。
こういう場合、第三者に話してみてはどうでしょうか。他人へのほうが、意外と話しやすいかもしれませんよ。パーソルキャリアでは、「タニモク」という利害関係のない他人に目標をたててもらうワークショップを定期的に開催しています。そのような場を活用し、他人に自分のキャリアや「はたらく」の価値観などを話すことでアドバイスをもらい、自分のキャリアの軸を改めて探してみるのもよいと思います。
年収が下がっても、ビジョン・ミッションに共感できるならいい。年収が下がるとは限らない
田村:最後は、企業のビジョン・ミッションと自分が成し得たいこと、例えば地域貢献や環境保全などが合致しているところではたらきたい。年収は下がっても構わないというケースです。
山口:ハイクラス人材に特に見られるケースだと思います。自らが掲げるミッションを大切にし、自己実現のためならば年収が下がることをも受け入れるということですね。
今回、「年収」というワードがたくさん出てきているので付け加えると、年収帯が高いハイクラス人材は特に、絶対に給料を下げられないとなると、その時点でチャンスを自ら棒に振ってしまうことになりかねません。だからといって、希望年収を下げればいいと言いたいわけではありません。
年収は、ジョブと個人のスキルを掛け合わせて、その企業の評価制度に当てはめた上で決まります。ですから、年収を上げたい、下げてもいいという考え方ではなく、オファー年収に加え、その企業でできるはたらき方や待遇・福利厚生、休暇・休日などを総合的に判断するのが賢明だと思います。それで納得できないのであれば、転職する必要はありません。
田村:そうはいっても年収が気になる人のためにお伝えしておくと、わたしは担当している転職希望者の方とも話し合って、覚悟を持って応募していることを企業に伝えるためにも、キャリアチェンジの転職の場合、最低希望年収は8割ほど、希望年収は現年収以上にしています。結果的に、年収が現職よりも上がった人のほうが多いですよ。
doda副編集長の「これがキャリアオーナーシップの種」
山口:ここまで3つの事例を紹介してもらいました。田村さんは、キャリアのモヤモヤを抱えるハイクラス人材が、「キャリアオーナーシップ」を発揮するために大切なことは何だと思いますか?
田村:わたしは、仕事への責任感や「こうあるべき」は一度横に置き、自らのキャリアに対する思いや希望を本音で打ち明ける、相談ができる機会を設け、キャリアの選択の幅を広げることが大事だと思います。
山口:そうですね。そしてわたしはその本音を、第三者に話すということがポイントだと思っています。ここまで自分の力で築き上げてきた自分のキャリアを、モヤモヤを抱え続けながら歩んでいくのではなく、より納得のいく自分らしいものにしてほしいです。
①「べき論」は捨てる
自分のキャリアはこうあるべき。ビジネスパーソンたるものこうあるべき。経験やスキルが豊富な人ほど、モヤモヤしていても、このように考えがちです。「こうあるべき」と自分の中で完結させず、自分や当事者以外の第三者の視点を取り入れてみましょう。そうすればキャリアの選択肢は必ず広がります。
②周囲の人に本音で話す機会を設ける
ハイクラス人材ほど、自身が発する言葉の重みやその責任を意識しており、自分の本音を打ち明けづらいと思います。しかし、自分の本音を明かさず、ずっと胸に秘めているだけでは、望むキャリアは手に入りません。家族や友人、会社の同期や同僚といった気心の知れた人に話してみてどうでしょうか。身近な人に話しづらいならば、利害関係のない第三者に話してみましょう。
編集:パーソルキャリア広報部