管理職育児体験プロジェクト

多様性の尊重

はたらき方の多様性とその理解
「制限のあるはたらき方理解研修」から得る自分ゴト化
体験した3人の管理職座談会【後編】

パーソルキャリアでは2023年7月、管理職向けに「制限のあるはたらき方理解研修(旧:管理職育児体験研修)」プログラムを試験的に実施した。本研修の目的は、介護や育児などで時間に制約のある社員の仕事やはたらき方を、管理職が体験することで自分ゴト化し、実際のマネジメントに活かしていくこと。今回の試験実施を踏まえて、2024年の1月以降、パーソルキャリア内の役員を含む管理職全員の必須受講とし、時間や環境に制約があっても、誰もが活躍できるより良い環境づくりを目指す。
今回はこの研修に参加した3人の管理職に、時間制約のあるはたらき方についてどう感じ、どう意識が変わったか話を聞いた。

【研修を受けた座談会参加者】(再掲)

山本 雅俊エグゼクティブマネジャー

山本EM

doda事業本部
採用ソリューション事業部
SD統括部

小池英介ゼネラルマネジャー

小池GM

人事マネジメント統括部 
戦略人事

高橋 直樹エグゼクティブマネジャー

高橋EM

doda事業本部
dodaエージェント事業部
転職支援統括部

限られた「時間」にできる工夫

―この研修で得た気づきから、実際に行動に移したことはありますか?

山本: 「余白の時間」をつくることを意識するようになりました。私はもともと日中はミーティングや会議などに時間を費やして、その後メール対応やタスクを消化していたんですが、今回の「NO残業生活」によって夕方以降の仕事時間がスッポリとなくなってしまって。結果、日中にやるべきことが増えて、予定がパッツパツの状態になりました(笑)。常に時間とタスクに追われ続け、その焦りから心理的にも業務効率的にも悪循環になっていきましたね。
実際に時短勤務をしている社員のスケジュールを見ても私と同じような傾向にあったので、どうしたら改善できるかと考えて出た答えが「余白の時間」の有効活用でした。例えばミーティングでは5分でも10分でも早く切り上げるようにして、余った時間でメール返信をしたりタスクを処理したりするようにしました。そういった小さな時間の積み重ねで時間を「つくり出す」という感覚が養えました。これはグループ全体でも取り組んでいくべきことかもしれないと感じました。

時間調整

高橋: 私は直属の部下との1on1ミーティングを週に1度していたのですが、2週間に1度に減らしました。部下からは「私たちを見捨てるのか!(笑)」なんて冗談を言われたりもしますが、山本さんもおっしゃる「余白の時間」を生み出すためには必要な取り組みだと思っています。
また今回の取り組みから始めたことではないですが、人員を増やして、一人が担当する仕事の分担を減らすことも行っています。その結果、部署全体で早く業務を切り上げて帰宅できるようになりました。長い目で見ると仕事以外の時間を充実させることで、仕事の精度をより高め、長くはたらき続けられるようになるかもしれないという気づきもありました。

小池: 以前、私の部署に産休明けで復職した方がいたんです。そのとき彼女が「9時〜16時の時短勤務ではやるべきことが終えられない。やらなきゃいけないことは分かっているけどやれない」という悩みを抱えていました。
私も十分理解しているつもりではいたのですが、今回の研修で改めて自分ゴトとして捉えることができました。また時間制約のある中でうまくはたらけるようになるには、ある種の「慣れ」が必要だということも分かりました。取捨選択のコツというか、時間管理の仕方というか。そういったストレスや悩みを抱える部下に適切なアドバイスをし、臨機応変に対応できるようにしていきたいと感じました。

山本: そうですね。今までいっしょにはたらくメンバーや部下って、仕事上のはたらき方とか成果とか、そういう断片的なものでしか見てなかったなと。
これからは、その人がどんな制約を抱えながらはたらいているのかとか、どんな境遇の中で出社しているのかなど、その人を取り巻く環境みたいなものをより考慮していきたいと思いました。子育てだけじゃなく、介護や病気などさまざまな背景がありますから、管理職としても細かくその人に合った判断や対応が求められると感じました。

高橋: 私は子育てという時間の制約の中ではたらく当事者として、ある種の開き直りのような感覚がありました。
以前は「もっと仕事に時間を割きたいのに、それがかなわない」といった焦燥感もありましたが、子育てに参加しなければならない、参加したいという事実はどうにもできない。子どもを持ちながらはたらくことを選んだのも自分ですし、その限られた時間の中で制約のない人と比べて、いかに遜色のないアウトプットができるか? 何をやって何をやらないか? そういった取捨選択をして前向きな取り組みをしていくのも仕事のうちなんだという自分への気づきもありました。
時間制約のある中でのはたらき方に対する覚悟ができたという感じです。

小池: 今回は子育て中の時短勤務を想定した取り組みでしたが、子育て以外の時短勤務例もありますよね。
例えばご家族の介護や社員本人の病気など、管理職や周りのメンバーにも言いにくいし気づくのも難しいことも。でも本人はとても悩んだり苦しんだりしていることもあると思います。そういったセンシティブな問題を抱えている部下にも、1on1などでていねいにヒアリングして、よりはたらきやすい環境や体制づくりをしていきたいですね。

1on1

当事者の話を聞くことの大切さと、組織や制度の柔軟性

―この研修を経て、今後組織に活かしていきたいことなどはありましたか?

山本: やはり、話を聞く、意見を交換することの大切さに改めて気づきました。私の母がワーキングマザーだったこともあり、はたらきながら子育てをする人に対しての理解はわりとあるほうだと思っていたのですが……、ピントが外れていたところも多々あるなと(笑)。
管理職である私がどうのこうの一人で考えるよりも、その境遇にいる当事者と意見交換をして、壁打ちを繰り返しながら良い環境を構築していくことが正解なのだと今は感じています。また、グループ全体で仕事をシェアすることで、誰かの突発的な休みに対応したり、「代わりに私がやっておくよ!」みたいなことも気軽に言えたりする組織になれたらいいなとも思いました。

高橋: そうですね。子育てに限らず、仕事に満足に時間を割けないとか、最低限のタスクを処理する時間さえも取れないという方もいると思うんです。そういう人に対してサポートできる範囲でアドバイスをしたり、納期などを考慮して、対応が可能なように仕事を任せたりだとか、そういう個々への対応は必要になってくると感じています。そういった「弾力性」のある組織づくりを進めていくことへの意欲や意識は今回の経験を経て高まりました。

小池: それは私も同感です。私が今回いちばん感じたのは「分かった気になっちゃいけない」ってことです。出産や子育てや介護や病気など、個人を取り巻く環境って千差万別、だからこそ多様化するはたらき方や価値観を常にアップデートする必要があります。組織の体制づくりなどの「ハード面」、また個人の気持ちや感情を理解する「ソフト面」の両軸で物事を捉えて改善していくべきだなと改めて感じました。

研修を「自分ゴト化」すると、学びが深くなる

―最後に、今後このような「制限あるはたらき方理解研修」に参加される方に対してのアドバイスなどはありますか?

山本: ぜひ研修を「タスク」として捉えないで、積極的に楽しんで取り組んだほうが気づきが多いかもしれません。せっかくやるんだから、徹底的に残業もやめて、呼び出しにも迷わず即対応してみてほしいです。

小池: 山本さんとまったく同じ意見です。受け身で取り組むと、ただただ耐えるだけの1週間になると思います(笑)。なかなか得られないせっかくの機会なのでぜひ前向きに、楽しんで「企画に乗っかる」ような気持ちで自分ゴト化を体験してほしいですね!

高橋: ぼくも同じく、前向きに取り組んでほしいと思います。ちょっと難しいチャレンジではあると思うんですが、さまざまな事情を抱えながらはたらいている人がいるという気づきを得られると思います。また今後の組織づくりにも大いに役立つ体験となるでしょう。

まとめ

出産、育児、介護、家族の病気などで制約のあるはたらき方を選択することは誰にでも起こりうる。個人の事情を考慮した上で、その人らしくはたらけるようにするために、管理職は今何をすべきなのか。今回の体験型研修を通じて、時短勤務者の目線で深く自分ゴト化することができ、皆が安心して個人の能力を発揮できる、そんなキャリアオーナーシップが育まれる職場の実現のヒントを得ることができたようだ。

※掲載している内容・社員の所属は取材当時のものです。

編集:パーソルキャリア広報部 ライター:松島 由佳

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