パーソルキャリアでは、DI&E(ダイバーシティ、インクルージョン&イクオリティ)の一環として社員の「女性のヘルスリテラシー」向上に向けた施策を実施している。
2023年1月20日には、生理についての課題・PMSの症状を抱える部下のマネジメント方法を学ぶ、管理職向けのオンラインセミナーを開催。そして3月8日には、その学びをより深めるために、部下から体調について相談された際の具体的な対応方法についての講義と、上司と部下のコミュニケーション事例をもとに、問題点と改善点を考えるワーク形式の社内オンラインイベントを実施した。管理職同士の対話を通じて、これまでの自身の行動を振り返り、今後の適切なマネジメントにつなげる機会にすることで、社員が楽しく、心身ともに健康にはたらける環境作りを目指す。
多くの管理職が実践的な学びの場を希望
3月8日に、「メンバーから体調不良と業務調整の相談、あなたならどうマネジメントする?!」と題したランチタイムのオンラインイベントを実施し、パーソルグループの管理職やリーダーを中心に約50人が参加した。
今回のイベントは、1月に実施した管理職向けセミナー後のアンケートで、「生理やPMSへの理解が深まったが、部下とのコミュニケーションをどう取ればいいか分らない」「具体的なサポート方法を知りたい」という実践的な学びの希望や、「このテーマについて理解を深めたいが管理職同士で話す機会がない、相談相手がいない」という参加者からの声を受けて開催した。
1回のセミナー参加で、知識の浸透につなげることは難しい。セミナーで得た学びを実際の現場で活かし、自身の行動につなげるためには、現場での実践とともに考えることが重要になる。そのきっかけづくりとして、今回は同じ立場の管理職同士が「対話」を通じて、新たな気づきやマネジメントのヒントを得ることを目的にイベントを実施した。
イベント講師:金藤美樹穂氏プロフィール
株式会社uchu 代表取締役
新卒で現リクルートに入社。転職・婚活・結婚などの、女性のライフイベント領域で、「リクナビ薬剤師」「ゼクシィ縁結びエージェント」など、主に新規事業の立ち上げと拡大に従事。妊娠中にリクルートを退職、フェムテックベンチャーにて代表取締役に就任。事業売却による退任後、株式会社uchu設立。カラダ・ココロ・セクシャルの3領域における“ウェルネス"を高めるサービス展開を行っている。女性ホルモンバランスプランナー、上級妊活マイスターの資格を有する。
部下から相談を受けたときのマネジメントポイントとは
金藤: 部下を適切にマネジメントするためには、「生理・PMS」の症状は非常に個人差が大きいことや、通院したからといってすぐに改善されるものではないなど、マネジメントする管理職側が基本的な知識をつけることが必要です。そして、「業務を軽減してほしいのか」「チームに状況を開示してほしいのか」など、本人の希望をしっかり理解することが重要です。これらの理解がなければ、適切な支援ができず、部下は我慢して頑張りすぎてしまったり、周囲の理解を得られないつらさを抱えてしまったりすることになります
相談を受けた際、部下とすり合わせるポイントは「対応のすみ分け」「業務調整」「具体的な日々のサポート」「開示範囲」の4つだという。これらをしっかりすり合わせず、管理職側が勝手な判断をしたり、理解したつもりになっていたりすると、部下の悩みは解決されず、時には逆効果になることもあると金藤氏は話す。
事例をもとに「自分ごと」として考える実践ワーク
マネジメントポイントの解説後は、3~4人ずつのチームに分かれ、実際に部下から相談を受けたことを想定した以下2つのケースについて話し合った。
【ケース①】
PMSによってイライラやふさぎ込みなど、気分のムラに悩んでいたAさん。後輩に「気分のムラがあって相談しにくい」と言われたことをきっかけに、上司に相談。上司は良かれと思いベテランの指導係をもう1人つけたが、後輩指導にやりがいを感じていたAさんは、この体制変更で自信を喪失してしまう。
【ケース②】
PMSの症状でだるさや体の痛みがあり、その期間中はミスも増えていたCさん。後輩育成を打診された際に、自身の体調と不安を上司に伝えたが、上司は自分がフォローすればよいと考え、体制変更などは行わずにCさんの状況のみメンバーに共有。結果的に、上司も多忙で業務はうまく回らず、上司がメンバーに状況を伝えたことで、Cさんは周りの目が気になり仕事がしづらくなる。
2つのケースの問題点と上司の対応の改善点について、各チームからは、
- いきなり体制変更するのではなく、本人の希望を聞くべきだった
- 本人に確認せずメンバーに開示したのがまずい
- 日々の業務を通して上司との信頼関係が築けていたのか疑問
といった声が上がった。
また、男性マネジャーからは、
- 女性からこういった相談をされたことがそもそもない
- どうしても男性上司には言いづらいのかもしれない
という意見もあった。
金藤氏は、2つのケースに共通している問題点はコミュニケーション不足と話し、次のように総括した。
金藤: 相談する本人も上司も、また周囲のメンバーも、まずは双方が「生理、PMS」についての正しい知識を持っていることが大切です。さらに、日ごろからの対話を通じて、プライベートなことでも相談しやすい雰囲気づくりや、信頼関係の構築が重要になるでしょう。上司や周囲がきちんと受け止めてくれると思えることが、はたらく上での心理的安全性にもつながってきます。
「自分ごととして捉えられた」「コミュニケーションの大切さを学んだ」と参加者からも好評
イベント後の参加者アンケートでは、次のような意見が寄せられた。
- 具体的な事例をもとに、ディスカッションを挟むことで自分ごととして考えられた
- 2つのケースを元にした対話を通じて、職場内でのコミュニケーションの取り方で気をつけるべきことや、マネジメントの際の4つのフレームとして学ぶことができた
- 相手によかれと思った行動が逆効果になることもあることが分かり、事前に合意を取るコミュニケーションの重要性を感じた
- PMSに限らず、メンタル不調やその他のケースでも活用できると思った
社員のヘルスリテラシーの向上は、パーソルキャリアが目指す、はたらく人々が自らの意思で仕事や人生を選択する「キャリアオーナーシップ」の実現には欠かせない要素となる。またこれらの機会をきっかけに、管理職がリーダーとしての能力を向上させることで、組織全体のはたらきやすさや個人のリーダーシップ、キャリアオーナーシップの発揮につなげていく。
編集:パーソルキャリア広報部 ライター:尾越まり恵