キャリア図鑑 vol.5

キャリアオーナーシップのヒント

【キャリア図鑑】Vol.5 女性の「はたらく」(Part2)
出産、子育てなどを経た女性が、望むはたらき方をかなえるためにできることとは?
「キャリアオーナーシップ」発揮のヒントを、自分らしい「はたらく」を
かなえた人たちの事例も交えながら探る

皆さんは、「キャリアオーナーシップ」と聞いて何を想像しますか?「キャリア志向な人」「意識が高い人」、または「成長し続けること」「キャリアアップしていくこと」…… そんなことを思い浮かべるのではないでしょうか。「キャリアオーナーシップを育む社会の創造」を目指すパーソルキャリアは、自分の可能性を信じ、自分の意思でキャリア、そして人生を選択することが、「キャリアオーナーシップ」だと考えています。本連載では、当社のサービスを通じ、自らが望む「はたらく」をかなえた人たちの事例も交えながら、「キャリアオーナーシップ」発揮のヒントを探ります。

今回は、doda副編集長の川嶋由美子が、dodaキャリアアドバイザーの時田絵里奈に話を聞きました。

doda副編集長 川嶋さん

川嶋 由美子(かわしま・ゆみこ)
doda副編集長

時田さん

時田 絵里奈(ときた・えりな)
dodaキャリアアドバイザー

はたらき方の多様化により、
ライフイベントを経た女性も自分の生活スタイルに合わせて就業環境が選べるように

doda副編集長 川嶋(以下、川嶋):前回のVol.4 女性の「はたらく」(Part1)に引き続き女性に焦点を当て、今回は結婚、出産、育児といったライフイベントを経た人たちの「はたらく」にフォーカスしたいと思います。今回は、長く女性のキャリア支援に携わっているdodaキャリアアドバイザーの時田さんと一緒に、転職事例も紹介してもらいながら、ライフイベントを経た人たちが「キャリアオーナーシップ」を発揮するためのヒントを探っていきたいと思います。

では時田さん、人材不足に歯止めがかからず女性の社会参画がいっそう求められる中で、新型コロナを機にはたらく場所や時間の自由度が高まるなど、はたらき方が多様になりましたよね。こうした変化が、ライフイベントを経た人たちの「はたらく」にも影響を与えたと捉えています。現場で転職支援している時田さんはどう思いますか?

dodaキャリアアドバイザー 時田(以下、時田):はい、大きな影響を与えたと思っています。コロナ前は、出産などを経た人たちは時短勤務を希望するケースが多かったのですが、コロナ禍でリモートワークが普及したことで、出社せずともはたらくことができる。リモートワークなら、これまでどおりはたらき続けられそう、と思う人たちが増えたように感じています。

川嶋:コロナ前、リモートワークは珍しかったですよね。転職サイト「doda」内で求人を探す際のキーワードのランキングというものがあるのですが、コロナ前はTOP100にリモートワーク関連のキーワードが1つランクインしている程度、しかし今はTOP10に4つ(在宅勤務、フルリモート、リモート、在宅)入っています。それくらい、リモートワークしたい人が多いということですね。

ライフイベントを経た人たちに関していえば、各々のライフスタイルに合わせて、リモートワークやハイブリッドワークといったはたらき方ができるようになり、仕事を辞める、時短ではたらくといった以外の選択が可能になったということですね。

時田:選択肢が広がったことで、リモートワークを希望する人は確実に増えましたね。2022年ごろから、「勤め先がリモートワークをなくすことになったので転職したい」という相談が増えました。また、リモートワークなら時間の融通が利き、仕事を続けやすいので、育児や介護などのライフイベントを経た人からもキャリアを再構築したいという相談が増えています。

川嶋:ライフイベントを経た人たちにとって、リモートワークは自分たちの「はたらく」をコントロールする上で大きな助けになっているということですね。実際にどんな事例があるか気になりますね。

仕事にブランクがあっても、正社員として社会復帰できる

時田:まずは、子育てを経て社会復帰した事例を紹介したいと思います。出産を機に子育てに専念するために仕事を辞めたけれど、子どもがある程度大きくなったので、もう一度正社員としてはたらきたいというケースです。

実際、正社員としてはたらくことは辞めたものの、子どもが成長する過程でパートやアルバイトを始める女性は多くいますよね。そのようなキャリアを歩んでいる人たちから、「もう何年も正社員としてはたらいていないし、パートやアルバイトのわたしが正社員として社会復帰できるのだろうか」といった不安の声をよく聞きます。10年以上のブランクがある人もいらっしゃいました。

川嶋:今は人材不足が極めて深刻なこともあり、もちろん業種や職種によりますし、最低限のビジネススキルは求められますが、ブランクがあることや、パート、アルバイトといった今の仕事の雇用形態を気にしない企業は多いですよね。また、スタートはアルバイトや契約社員でも、正社員登用を積極的にしている企業も増えています。

時田:おっしゃるとおりです。アルバイトをしているならば、どのようなことを経験し、どのようなスキルを身につけたのか。それにひも付いて、スキルアップのために学んでいることがあれば、何を学んでいるのか。また、育児やPTA活動を通じ培った効率的な時間の使い方やコミュニケーション力などをアピールするなど、ブランクをカバーする方法はあります。

川嶋:はたらいていない期間があるからといって、過度に悲観的になる必要はありません。先ほど最低限のビジネススキルが求められるといいましたが、自宅にパソコンがあるなら、ExcelやWord、Outlookといった最低限のパソコンスキルは身につけておくとよいでしょう。パソコンがなかったとしても、ネット動画などで学ぶこともできます。

また、世の中のトレンドをウオッチするのも大切です。興味のある業界や職種の動向をニュースで追うなどしておかないと、面接時に話についていけません。これは、言い換えると社会を知るということです。ブランクがあったとしても、学ぶ姿勢や世の中の流れをキャッチアップし続ける前向きなマインドが大切だと思いますし、自ら考え行動できる人を、今まさに社会は求めていますよね。

職場復帰後を見据え、育休中に自らが望む「はたらく」をかなえる

時田:次は、育休中の転職事例を紹介します。職場復帰後は出社がマスト。そのため、復帰前にリモートワークができる会社に転職し、家事・育児と仕事を両立できるようはたらく環境を整えておきたいというケースです。

川嶋:以前なら、こういった状況下での転職はかなわなかったでしょうね。

時田:おっしゃるとおり、企業は受け入れなかったでしょうし、そもそも育休中に転職活動をする人はあまりいませんでした。一方で、最近では育休中の人からの相談が増えていますし、育休中であることを気にしない企業も多く、実際転職がかなっています。

川嶋:今企業が気にするのは、その人がこの仕事ができるだけのスキルはあるのか。なかったとしたら学ぶ意欲はあるのか。あるならば、はたらく場所や時間については柔軟に対応する。そのように企業のマインドが変わってきています。

そして、育休中に転職することを自分本位な行動だと思う必要はないと思います。どのタイミングで、どのようなはたらき方を選ぶかは自分次第です。それも含めてその人のキャリアですし、個人の考え方や価値観を尊重する社会風土になってきていますよね。

この事例を聞いて改めて思いましたが、女性は計画的に未来を予期し、前倒ししてキャリアや人生を考える人が多いですね。職場復帰したらさらに時間の制約が厳しくなるだろうから、育休中にリモートワークができる会社に転職しよう。転職するなら勉強しておいたほうがいいだろうなど、先のことを考えて行動していますね。

家族をケアできる環境ではたらきたい

時田:最後は、家族のケアをしながらはたらきたいという転職事例です。病気やけが、高齢などにより、自宅で家族のケアをする必要がある。そのため、フルリモートワークができる会社に転職したいというケースです。

わたしが支援した人たちの中には、自宅で家族のケアをしながらはたらける仕事、例えばエンジニアやライター、事務などに就き直したいといった希望の下転職活動をし、実際にかなった人が多くいます。希望の条件下で転職できた人たちに共通するのは、必要なスキルを身につけるために学ぶといった前向きな姿勢が見られることです。この前向きな姿勢は、企業から評価されます。

川嶋:自分の希望のはたらき方をするために努力を欠かさない女性は強いですよね。フルリモートではたらきたい。出社時のことも考慮し●●線沿線上の企業がいい。残業は極力したくない。こういった希望を明確にすることはむしろよいことだと思います。しかし、希望をかなえるためにどのような努力をしているか、はその人の置かれた状況にかかわらず問われますよね。

時田:わたしもそう思います。また、すべての希望をかなえるのは困難だということを念頭に、きちんと優先順位を整理する必要があると思っています。例えば、家庭と仕事を両立したい、が今最も望むはたらき方ならば、「自分のはたらき方を自分で選べる仕事に就く」と「年収が上がる仕事に就く」は同列にはならないはずです。

川嶋:重要ですね。一方で、年収アップを含め、自分のキャリアに対する希望をあきらめる必要はありません。今すぐは難しくても、ライフステージが変わって実績を積み上げていけば実現できないことはありません。自分次第です!

doda副編集長の「これがキャリアオーナーシップの種」

川嶋:ここまで3つの事例を紹介してもらいましたが、時田さん、ライフイベントを経た女性が「キャリアオーナーシップ」を発揮するために大切なことは何だと思いますか?

時田:わたしが紹介した事例のように、子どもが手離れするタイミング、産休が明けた後などここ数年を見据えている人は多いのですが、中長期スパンで自分のキャリアについて考えている人はそう多くないと感じています。ちょっと長い目線で、今後起き得るライフイベントも加味しながら、どんなキャリアを歩んでいきたいか考えることが大切だと思います。

川嶋:はたらく人生は今後ますます長くなりますからね。そして、ライフイベントを経た女性は、以前と同じようにははたらけないわけで、条件はさらに厳しくなりますよね。だからこそわたしは、女性は特に、自分がかなえたい希望をはっきりさせて優先順位を付け、それを周囲に相談することが重要だと思っています。

①長い目線で自分のキャリアを考える

ここ1年ではなく、5年、10年といった長い目線でどのようなキャリアを歩みたいか、今後のライフイベントも考慮した上で考えてみましょう。そうすると、自分に足りないものが見えてくるはずです。それに対してコツコツ努力を重ねていけば、納得のいく「はたらく」人生を歩めるでしょう。

②希望を洗い出し優先順位付けし、周囲に相談する

自分の希望を自分の中に閉じ込めてしまい、はたらきづらさを感じている女性はまだまだ多いと感じています。はたらく上でネックになっていることがあれば、周囲に相談しましょう。具体的に相談しなければ伝わらず、伝わらないと解決しません。察してほしいという気持ちをいったん捨て、「子どもが熱を出したときは、こんな対応をしてほしい」「18時以降に来たメールには、誰かに代わりに対応してほしい」と伝えましょう。

編集:パーソルキャリア広報部 

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